SOUL EATER book4

□いままで、ありがとう
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いままで、ありがとう


そう言った彼は心の底から安堵したかのような笑みを見せた。
握った彼の手はもう力もこめることができないのか、私の手を握り返そうともしない。
なぜそんなことを言うの。問えば彼はただ笑うばかり。
幸せだったよ、と紡がれた言葉に、私は今度こそこらえきれず涙を零した。
嘘つきね。そう言っても彼はただ笑うばかりで何も答えない。
真っ赤な血液が周りにどんどん広がっていく。
その血だまりの中に思わず手を突っ込んだ。その手をずりずり滑らせる。

意味はない。

血をかき集めたってもう彼は死ぬことが決まっているのだ。
どうしようもならない事態を遅く理解した私は、顔に血が付くのも気にせず文字通り頭を抱えた。
溢れてくる涙が止まらない。止まってくれない。止まる気配もない。
なのに笑みを浮かべ続ける彼に、私は耐え切れず「どうして」と言葉を紡いだ。
なぜ私の大切な人は次々死んでいくの。
彼は笑うのをやめた。
今にも閉じそうな瞼を必死に開き、彼は低い声で私の名を呼んだ。


「最高のパートナーを失くした俺たちが長く生きられる訳もない。
全ては決まっていたんだ。
マカやブラック☆スターとパートナーを組んだ日から。
俺たちは職人と2人で1つ。
だからお前も、ブラック☆スターがいなくなってから、新しいパートナーを見つけずにここまで来たんだろう?」

「………見つけらんないよ。そう簡単に。あの子の代わりは」


いつの間にか背を越されて、色んな意味で大きくなって、もうあの子呼ばわりは失礼だろうとやめた。
でも彼が死んでその成長が止まって、私はまた彼をあの子と呼ぶようになった。
遠いようで近かったあの子の存在が、もう遠いから、追いかけることができないから、だから私はあの子と呼ぶようになったのだと思う。


「私ね、ソウルくんとなら波長を合わせられるような気がしたわ。
武器1人で立ち回るの大変じゃない?いつかは死ぬと思ってた。
なのに、こうなるってわかってたのに、ごめんなさい、私、ねぇ、ソウルくん」


血で汚れた白かった髪の男性の名を呼ぶ。閉ざされた瞼に何度語りかけても、彼はもう笑ってくれない。

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