SOUL EATER book4

□もう少しだけ、この幸せに浸らせてください
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カタカタという音が聞こえる。
急に周りが明るくなって、目の前には緑の布。
それがベッドの上の布団だと気づいたのは数秒後で、私は今眠りから覚めたのだと理解したのはそれから十数秒後。
だるさを感じる体を無理やり動かし耳が感じた音を視線で辿る。


「うるさいか」

「…ううん」


低く単調な声に思わず笑いながら返す。
ベッドのすぐ隣り、床の上にあぐらをかいて座っているブラック☆スターが、ノートパソコンに何やら打ち込んでいた。
ベッドの端まで寄っていってブラック☆スターの手元を見下ろす。
だらりとベッドから腕が垂れ落ちたが持ち上げることさえだるい。
そんな所で何してんの、と問うと暫くの間のあと「別に」と彼は答えた。
夜中に何してんの、と問うと彼はちらりとこちらを見て、皮肉っぽく鼻を鳴らした。


「誰かさんがベッド一人で占領して寝るに寝れねえんだよ」

「あら誰かしら」

「お前だお前!」


ノートパソコンを閉じようとブラック☆スターが手をかける。
その手をベッドから垂れた手で掴む。
面白いぐらいにぴたりと彼の動きが止まる。


「何してるの?」


じっとブラック☆スターの目を見る。
瞬きすらせずにぴったり止まってしまった彼と無音の時を十数秒過ごし、気まずくならないようにと口角を持ち上げてみた。
眠くて眠くて。特に何か考えての行動という訳でもなかったのだけれど。
彼は降参したかのように瞼を下ろしため息を漏らした。


「ゲーム」

「仕事じゃなくて?」

「残念、ゲーム」

「あんたらしいわ」

「…だろうな」


どうせ前世でも俺は不真面目だったんだろう、と自嘲気味に笑う彼にそうねと返すと、彼は少ししょんぼりとした。
ブラック☆スターを掴んだ手に力をこめて、ノートパソコンをぱたんと閉じる。
じっとブラック☆スターの目を見つめていると、居心地悪くなったのか変な表情をしたのちに私の頭をクシャリとなでてくれた。


「幸せ、私」

「ならベッド半分わけてくれよ」

「だーめ」


にっと笑って言ってやるとブラック☆スターは私の頬を軽くつねった。



もう少しだけ、この幸せに浸らせてください

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