SOUL EATER book4
□宝はあの奥に
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「敵来てんぞ」
「あっ!」
ちゅどーん、なんて音がテレビのスピーカーから流れると、マカはがくりと肩を落とした。
ゲームオーバー。ポップな字が画面いっぱいに広がると、マカは顔を上げてテレビを睨みつけた。
「なによなによちょっと反応遅れただけじゃない」
「そういうのが命取りだぞマカ」
テレビ画面に向かってキィィと歯をむき出すマカを見て自然と口元が緩む。
ゲームでもマカは弱っちいなぁ。
貸してみろ、とコントローラーを奪い、怒り出すマカを無視してちらりと玄関の方へ視線をやる。
そもそもこのゲームはソウルとやる筈だった。
学校で新しくソフト買ったぜと自慢したら羨ましがられたので、ならばやらせてやろうじゃねぇかと持ってきた。のに。
ソウルは買い物でおらず居たのはマカのみ。
帰ってくるのは遅いだろうと聞いてすごすご家路につく訳にもいかず、じゃあマカとやればいいやって乗り気じゃないマカを巻き込んで。
だがコントローラーを取られて怒るということは余程このゲームが気に入ったらしい。
未だ帰らぬ友の姿を想像しながら、玄関からテレビ画面へと視線を移した。
「見てろよマカ!俺様の華麗なるプレーを!」
「あんたゲームする時もうるさいのね」
サクサク敵を倒しダンジョンを進む俺のプレーにマカが感嘆の声を漏らしながら食い入るように見つめる。
もうなんべんもやった所だから目を瞑ったってクリアできる気がした。
ソウルまだかなぁなんて考えながらカチャカチャボタンを押す。
いくら敵を倒してもソウルは帰ってこず、思わず溜め息がもれた。
「あ、ボス」
「え?これが?」
「こいつ弱ぇからお前でも倒せるだろ」
「ザコ敵相手に負けた私でも?」
「ザコ敵の方がつえーよ、このダンジョン」
コントローラーを投げるように渡すとマカはあたふたしながらそれをキャッチする。
テレビ画面を見つめ装備品を整えるマカの目は真剣そのもので、同時に緊張も現れているように見えた。
ボスとの戦闘が始まった瞬間にマカの体が強ばる。
現実世界でもっと強い奴と戦ってるのに何を緊張してんだか。
マカの基準がわかんねぇなぁ。
体を動かしながら苦戦するマカを俺はニヤニヤと見つめていた。
「ブラック☆スター!やった!やった勝ったよ!」
「おぉ?おーおめでとう」
スポーツ試合なら名勝負。現実の戦闘ならかなり痛手を負った勝負。
つまりマカとダンジョンのボスは互角の戦闘力で、かなり長い時間を費やしてやっとマカが勝利を収めた。
戸棚にあった菓子を食べ漫画を読んでいた俺は、マカが勝利を収めた瞬間を見ることができなかったがそんなことは彼女に関係ないらしい。
コントローラーを投げ出し両手をあげ雄叫びをあげるマカ。
投げられたコントローラーを手に取り、それをマカに話しかけながら渡す。
「まだ仕事残ってんぞ」
「えっ?」
素っ頓狂な声をあげぽかんと口をあけたマカのマヌケ顔に笑い出しそうになる。
だが俺は努めて真剣に、真顔で、テレビ画面を指差した。
「敵倒したあとに裏っかわに道現れただろ?」
「あっ、そういえば」
「あの奥にお宝がある」
「!!」
目を輝かすマカを見て噴き出しそうになるのをこらえ、俺は震える声に力を込めた。
「おめでとうマカ。その宝はお前のモンだ」
「ブラック☆スター…!!」
うるっとマカの目が滲む。
コントローラーを受け取ったマカは「よし!」と大きな声で気合いを入れて奥へと進んだ。
宝はあの奥に
「ぶぶぶブラック☆スター!?宝箱がモンスターになったんだけど!?」
「かかったな馬ー鹿!言っとくけどそいつこのゲームのラスボスよりつえーかんな!ゲヒャヒャヒャヒャ!!」