SOUL EATER book4
□和の小物
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「椿んちってほんと日本!って感じするなー」
「そうかしら?」
あがって、と通されたリビングにはソファやダイニングテーブルなど無く、代わりに薄っぺらいクッションや足の短いテーブルなどがあった。
日本の部屋を見る機会などないので"日本って感じ"が自分でもイマイチわからなかったが、
玄関のドアを開ける前は見慣れたアメリカの風景だったのに部屋に入った途端異国らしさがそこに鎮座していて、最初見た時は驚いたものだ。
「どうぞ」と勧められ薄っぺらなクッションに座る。
以前来た時に「それはザブトンっていうのよ」と言われ強そうな名前だなぁ、薄っぺらなクセに。という感想を抱いた。
「なーアレはなに?」
「アレはお財布よ。普通のがま口財布だけど、あの独特な模様は日本では唐草模様って言われてるわ」
「あ、お茶ありがとう」
「いえいえ」
にこ、と微笑みながら椿が茶を差し出す。
それをごくりごくりと飲んでいると、椿も自分のコップに口を付けズズっと音をたてながら飲んだ。
そばを食べる時もお茶を飲む時も椿は音を立てすする。
アイスティーだと音を立てずに飲むのになぜだろうとよく疑問を抱くが、それを投げかけたことはない。
それはどうしてだろうとふと思い、自分に問いかける。
聞きづらいんだよ、なんとなく。
「なー椿、私たちってこうやってよく会ったりするだろ?ブラック☆スターが居ない時は椿んち行ったり、どっちの家も都合が合わない時は外に出かけたり」
「よくするわねぇ」
「でもなぁんか一歩離れた関係だよなー」
「そうかしら。私は大切な友達の1人だと思ってるけど」
椿が困ったように眉を八の字にする。
リズちゃんは違うの?と言いたげな瞳に思わず見とれてしまいそうになり、私は慌てて視線を外した。
「リズちゃんったら酷いわ」
椿が頬に手をそえ目を伏せる。
その動作を見て、私の心をちくりと刺激しながら罪悪巻が生まれた。
「……椿って意外と腹黒いよなー…」
「ふふ、リズちゃんだけによ」
いたずらっぽく笑う椿に私は乾いた喉を潤そうと茶を飲んだ。
ことり。無音の部屋にコップを置く音が嫌に響く。
私はいつも椿と何をしゃべるんだっけ。
きっと自分のことだからつまらない事だろうと記憶をたどるが全く思い出せない。
パティのこと?キッドのこと?ブラック☆スターのこと?
まぁどうでもいいか。と私は辿っていた記憶を放り出した。
これから新しい話題を話すには必要のないこと。
「なー椿、アレ、何?」
「あれ?あれはお手玉っていうのよ。ぽんぽん投げて遊ぶの。日本の女の子がよくやるわ」
「あんなカワイイの投げるなんて日本ってクレイジーだな」
和の小物