SOUL EATER book4

□遅すぎた再会
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何の因果だろうと思った。
高校の入学式で真っ黒な髪を見つけた時初めはわからなかった。
なんとなくその人に目をとめて、さらっと顔を見て、目をそらす。

目をそらしたあとで、どこかで見覚えがあったような、と再度その人に目をやったところで、やっと思い出した。


「ソウルくん!」


大きな私の声に、体育館から教室へと歩いていた皆が振り返る。
私がソウルくんと呼んだ彼も例外なく私の方へ振り返って、一瞬苦い顔をした。

しまったと咄嗟に思った。
前世の話をしたところで信じてもらえる筈がない。
普通の人間は前世なんか心の底から信じてもいないしその記憶だってない。

苦い顔をしたソウルくんは私を数秒見つめたあと、くるっと前に向き直って歩き出した。


「なぁに、あの子」


ソウルくんの隣りに立つ女の子がソウルくんにそっと耳打ちをした。でもしぃんと静まった辺りではその声すら大きく。
まさか、と嫌な予感がして、私はその子をただ見つめていた。


「椿、大丈夫?」


急な大声を心配してか友人が私の肩を叩く。
そちらへ振り向けずに私は歩き出した2人を見つめていた。


「昔の知り合い」


ソウルくんのその言葉で、ソウルくんは私のことを覚えているのだと知った。
なら何故私を無視するの、問いたくてでも答えが怖くて私は何も言えずに2人の会話を追うように人ごみを掻き分けた。


「そうるってなに?」

「昔の呼び名だよ」

「もしかして元カノ?」

「…そんなもんかな」

「やだー妬けるー!」


聞こえてきたその会話で私はやっと足を止めた。
ソウルくんとその隣りの女の子の関係が嫌でも理解できた。
私が前世で立っていたその立ち位置を、今はその女の子が立っているのだ。


「椿、椿!ねぇ大丈夫なの?」

「あ、ごめん」


私を心配して追ってきた友人は、酷く驚いた顔をしていた。


「なに、なんで泣きそうな顔してんの」


そんなに酷い顔してたかしら。
入学式に鏡なんて持ってきておらず、私は自分の顔も確認できずに恥ずかしさで顔を覆った。


「もしかして好きな人だった?」

「…うん」

「あちゃー。どんまいどんまい。確かにイケメンだったけど人は顔だけじゃないって」

「…素敵な人よ」


前に、また会う約束してたんだ。そう言うと友人は訝しげな表情をした。


「待たせすぎちゃったのかな。怒ってるみたい」

「彼女さんもいるみたいだし、諦めた方が無難だよ」

「……そうね」



遅すぎた再会


 

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