SOUL EATER book4
□ルビーのイヤリング
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「ピアス開けたい」
「そんなことよりお前、俺んちに勝手に家具増やすなよ。ここ日本だぞ?どうすんだよこのソファ」
「今時日本でも普通に使われてるわよソファなんて」
どうするも何も使えばいいじゃないと座椅子を蹴ってよけて、ソファを引っ張ってテレビの前へ。
フローリングなんだからあっても不自然じゃないわよ。畳の部屋じゃないくせに何言ってんだか。
「つかお前、ピアス?」
私のさっきの言葉を今更理解したらしいブラック☆スターが、ソファを移動し終わって汗を拭いながら言った。
クーラーのリモコンをいじりながらうんと適当に返事を返すと、ブラック☆スターが素っ頓狂な声をあげた。
「ハァ!?色づいてんじゃねぇぞクソガキ!」
「何よあんたが振り向いてくれないのが悪いんじゃない!」
「ちゃんと交際してやってんだろバカだな」
嫌々付き合ってくれてんのまる分かりなのよバカなのはあんたでしょ!
唇を噛み締めぐぬぬと唸ってから、私はブラック☆スターの財布を引っつかんで玄関に向かった。
「ピアッサー買ってくる」
「おい本気かよ」
ブラック☆スターが私の前に立ちはだかって行く手を阻む。
大きく広げた手から逃れられる気はしなくて、私は口尖らせながら財布をソファへぽいと投げた。
「諦めが良いな」
警戒しているようにブラック☆スターが低い声で言う。
本気じゃなかったからね。ブラック☆スターから視線をそらしながら心の中でひとりごちた。
ブラック☆スターがぐにりと私の両頬をつねる。
痛みはないので彼を睨むことはせず視線をそらしたまま。
「おいこっち見ろよ」
「やー」
「拗ねてんのかよ」
「まぁね」
はぁ、とブラック☆スターが溜め息を漏らす。
「俺は別にピアスしてる女好きでもねぇぞ」
そんなことわかってるわよ。
でも今の自分じゃブラック☆スターを振り向かせることができないのも分かってるわけで、
まずはオシャレかしらと考え思いついたのがピアスだった。
そんなもの身につけた所でブラック☆スターが私を好きになってくれる訳ではないけれど。
「マカ」
悟すような声に私は観念してブラック☆スターの目を見つめた。
「そんなにピアスつけたいんならイヤリング買ってやるよ」
「イヤリング?」
「それだと穴開けなくて済むからな」
ぽんぽん、と頭を優しく撫でられる。
その子供扱いやめてよね。
「赤いやつがいい」
「赤いやつな」
「派手なやつ」
「似合わねぇだろうな」
ひゃはは、と笑うその声が酷く懐かしくて私は目を細めた。
私がどんなに頑張ってお洒落してもこいつは「わかんねぇ」か「似合わねぇ」のどちらか。褒めてくれることなんかあったかしら。
でもそんなことはどうでもよくて。
今はブラック☆スターの視界に入るだけでよくて。
「それでもいい」
だってあなた目立つの好きでしょ?
ルビーのイヤリング