SOUL EATER book2
□未知なる関係性
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例えば飯を食ってる最中にふと感じた物足りなさ。
バスケでゴールを決めたときの空虚感。
恋人とキスしたときの不快感。
考えてみれば自分の人生に違和感を感じることが多々あった。
それは気にする必要のない些細なこと。
目を瞑ってれば立派に生きていけるとても些細なこと。
だがどうしても何をするにしても俺の心に何かが引っかかって、
その引っかかりがみるみる広がって俺を蝕んでいく。
それが嫌で嫌で、いつか俺は侵食され切って俺じゃなくなるんじゃないかと怖くて怖くて。
ガチャン、と皿が音をたてて割れた。
泡だらけの手から力が抜けて、皿は滑って落ちてしまった。
何かがグチャグチャきたねー音をたてながら俺の内側を食い潰す。
ヒューヒューと喉から漏れる呼吸音に急かされ急いで自室に向かう。
テーブルに置かれた薬袋をひっつかんで中身を取り出す。
ああ病院にかかったってこれは治りゃしねぇ。いくら大量の薬を飲もうがいつだって襲ってくる不安感。
効かないとわかりきってる薬たちを口に放り込んで、事態は何も良くなっちゃいねぇのにふぅと一息。
ぐしゃりぐしゃり内側を食い破られる音が鼓膜のすぐそばで聞こえる。
俺はあと少しで死ぬのだと。
そんな訳はないのに悟ったように心の中央で自分の死をシュミレート。
笑えねえやと口元を緩めたところで。
ふと。
ふと思い浮かんだ人物の名を、口にしようとしてすんでの所で噤む。
ためらってためらって、それでも口に出さなきゃいけないような気がして。
「ま、か」
途端に襲ってきた安心感に、洗い物の途中だった事も忘れて身を任せて、俺は意識を手放した。
未知なる関係性