SOUL EATER book2

□薄荷の飴
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戸棚にしまった、飴の入った缶を取り出す。
戸棚は背が高くて私でも少しばかり届かなくて、折り畳みの椅子を取り出しその上に乗った。
何も言わずにその椅子を支えてくれるソウルくんを優しいな、と思うのと同時にほんのちょっとだけ、マカちゃんを羨ましく思う。

がら、ごろ、と音を立てたそれはソウルくんの目を引き付けた。


「なにそれ」


想像した通りの質問に微笑みながら「飴玉よ」とだけ返す。
「へぇ」と間の抜けた声とは反対にその目は爛々と輝いていた。


「くれんの?」

「どうぞ」


言いながら固い缶の蓋に指をかける。
思ったよりしっかりと閉じられていて、私は"ああ、ブラック☆スターも食べたのだな"とすぐに思い当った。

彼に見つからないよう、隠していた筈だったのに。
自分の意地の悪さとあの子の嗅覚の鋭さには頭が上がらない。

しばらく奮闘してみてからやっと、
開かない、と指をさしながら缶を振るとソウルくんは手のひらを差し出した。

その手のひらに右手をそっと置いて、椅子から降りる。
するとソウルくんは苦笑しながら「そうじゃない。貸してみろ」と言うので、私は顔に熱がこもるのを感じながら缶を差し出した。


がらり、ごろり、少しの間室内には缶と飴がぶつかる音が響き、一際大きな音を立てながらやっと缶の蓋は開いた。


「お礼に一粒どうぞ」


言うとソウルくんは自らの髪色にそっくりな飴玉を1つつまみ出し、私が何か言う前にぱくりと口の中へ放った。


「それは」

「…めちゃくちゃ変な味」


うえっと舌を出すソウルくんに、今度は私が苦笑しながら缶から飴玉を1つ取り出す。


「おいし」


ころりと口の中で歯と飴玉がぶつかる。
ソウルくんは前歯で白い飴玉をはさみながら、缶の中を見つめていた。


「戻したらダメよ、ソウルくん」

「……じゃあ交換しようぜ椿」

「やだー」


折角頑張ったのに災難ね、笑うとソウルくんも眉を八の字にしながら笑い出した。




薄荷の飴


 

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