SOUL EATER book3

□色好い返事
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立場が異なれば、考え方も異なって当然でしょ?の続き。



立ち止まったまま地面を見つめるあの少女に会ったのは
長い雨が止んだ天気のいいある日のこと。

「何やってんだ」とすぐに声をかける気にはならなくて、
会社に置きっぱだった傘を握り締めたまま少女の背中をぼうっと見つめていた。
栗色にツインテールの少女がこの街に二人もいるとは思えない。
以前見た少女で間違いはないんだろうが、だからといってかける言葉も見つからず。


「声ぐらいかけなさいよブラック☆スター」


振り向かずに少女は無愛想な声でそう言って、地面を蹴った。
俺の友人しか知らない筈のあだ名を不意に呼ばれて、どきりと鼓動が一瞬早まった。


「忍者かお前」

「忍者はあんたでしょ」


子供の妄想をいちいち否定してやるのも面倒だ。俺はその話を続けることを放棄して、
幼い頃100均に売ってる短い刀で忍者ごっこして遊んだこともあったなぁ、と思いを馳せた。
懐かしい、と目を細めていると、少女はこちらをくるりと振り返り、スタスタと俺の目の前まで歩いてきた。

そういえばこいつ、前に会った時も同じ服だったような。
もしかしてあの日からずっと家出したままなのだろうか。それとも家がないのかなんなのか。

じっと俺を見つめる緑の両目から視線を外すことができず、
1つ溜息を吐いてから目線を合わせるように膝を折った。


「なぁ、家まで送ってやろうか。もしかして迷子か?」

「なんだかあんたがまともだと慣れないわ。もっとこう……、後光よ!とかないわけ?」

「…もしかして俺とお前知り合いだったりすんの?」


俺の問いかけに少女は静かに首を振る。
俺のあだ名を知ってたり俺の小さい頃の口癖を知ってたり、正直言うと気味が悪い。
悪いが、きったない服を着た家出してきたかもしれない小学生を放って置ける訳もなかった。


「お嬢ちゃん家はどこかな?」

「お嬢ちゃん呼び鬱陶しい」

「もしかしておじさんのこと嫌いか」

「…お、おじさん?…ブラック☆スターのこと?別に嫌いじゃないよ」

「じゃあおじさんのこと好きなんだな」


にっと笑ってそう言ってやったあと、沈黙が流れる。少女は顔を真っ赤にして顔を下に向けた。


「…お嬢ちゃんの家、教えてくれるかな」

「……、わかった」





色好い返事

 

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