SOUL EATER book3

□ショートショート詰め
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*お洒落(キドリズ)


前髪を切った。ほんの少しだけ。
たった少しを切るだけで美容室に行くのも気が引けるので、鏡の前で小さめの鋏を縦に入れて、よく目に入り私を困らせた束をさくさく切った。

ぱらぱらと切った髪を払い落とし、鏡の自分を見つめていると、
鏡に映る私の後ろに人影が見えた。

「キッド」

名を呼ぶとキッドは私の隣りに立ち、ふっと口角をあげる。

「髪を切ったのか」
「よくわかったな」
「鋏を持って髪を弄ってたらブラック☆スターにだってわかるさ」

ブラック☆スターを馬鹿の代名詞にしてやるなよ。そう言うと彼はふふふと笑う。

「似合っておるぞリズ」
「はいはい」

お世辞が上手なこって。



*休日(ブラリズ)


休みだから遊びに行こう、と言いだしたのはどっちだったか。
冬だし焼肉でも行くか?と聞いてきた彼の頭の中にはきっと飯の事しか考えちゃいない。

パティに見られちゃ恥ずかしいから、と彼の提案する行き先をことごとく却下する自分を、ブラック☆スターは苛立ちもせず次々に適当な場所を挙げていく。

「駄々っ子みてーでどっちが年上かわかんねぇな!」

嫌味ともとれるその言葉を発した少年の心は恐らく純真そのもので、
確かに弟のようだと思っていたけれど付き合ってみると中々頼りになる面もある。

「動物とか見たいなぁ」

ぼんやりとデート先の提案を挙げると、ブラック☆スターが手のひらを拳で叩いて「よし」と意気込んだ。

「じゃあサバンナにでも行くか!」
「いやいやいやちょっと待て」

前言撤回。こいつは頼りにしない方がいい。



*花(ソウ椿)


椿の花は根元からぽっきり折れ落ち、花弁を散らすことはないのだという。
なんと凛々しいのだろう。同じ名を持った彼女だってきっとそうなのだろう。

ぽたりぽたりと椿の頬を流れ落ちる涙を舌で掬う。
驚き見開かれた黒の瞳を、吸い寄せられるようにうっとりと見つめる。

何を泣くことがあるんだ。どうして泣く。

何も喋らない彼女の紅い唇と自分の唇を重ねる。
そっと閉じられた瞼に安堵して俺も瞼を下ろし暗闇に身を投じた。

必要ならば赤と黒の刃で剪定してやろう。風通しをよくしてやろう。見栄えよくしてやろう。椿の花が可憐に凛々しく咲き誇れるように。




*後光よ(ブラクロ)


荒々しいドアを叩く音が恐ろしく怖くて無意識に耳を塞ぐ。
それでも隙間から漏れ聞こえる音にいちいち肩をビクつかせる僕は、やっぱり彼とは合わない。

「クロナぁ!遊びに行こうぜ!」

全く騒がしいわね、と喉をゲコリと鳴らしてエルカが言った。
ベッドに潜ってありったけの声で「行かないよぉ!」と叫んでみても彼は帰る気配はない。
扉ぶっ壊すぞぉ!という声に慌ててドア近くまで駆け寄り、待って今開けるから、と声を搾り出す。

エルカがピョコリと跳ねてベッド下に隠れるのを見てから、そうっとドアを開ける。

ほんの少し開けた隙間からにゅっと指が突き出て止める間もなくドアを無理矢理開けた。

「おっせぇーよクロナ!ソウル達が待ってるからさっさと遊びに行こうぜ!」

顔をくしゃっとして笑う彼の笑顔は後光が差しているんじゃないだろうかと疑う程に眩しくて、
やっぱり僕と彼は合わないんだろうな、という感想しか出てこなかった。


 

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