大人になってから book

□鎌の先に君
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好きだと気づいて彼に告白してオーケーをもらったのはいつだったか。

もう忘れてしまったと、彼がふかす煙草の煙をぼうっと眺めた。ふわりと浮き上がって消えていくそれにふうっと息を吹きかければ、ふわりとそれはあちらへ流される。

それを見て彼はああ、と呟いた。急かされるような動きで煙草をもみ消しぽりぽり頭をかく。

「気がつかなかった。悪いな」

「煙草のこと?別に気にしてないわ」

フフと笑うと彼は安心したように笑い返す。

星、見えないね。私が呟くと彼は静かに頷く。まだはやいからと彼はいったがいつもこの時間なら星は見えていた。

無言で私と彼は空を見上げる。真っ黒な月が見え始めた空は漆黒に包まれかけていた。完全な暗闇が訪れそうだというのに不思議と恐怖はなかった。だからといって安心感があるわけでもなかったが。

遠くで犬の遠吠えが聞こえる。耳を澄ませば鈴虫の音も聞こえる。生物の存在のおかげで恐怖が薄まっているのかもしれない。


鬼神を閉じ込めてから、ブラック☆スターが、この家を出た。そのせいか私は夜眠れなくなってしまった。

自分でも不思議だった。体の一部がなくなった気がした。

きっと私はずっと支えていたものがなくなって、支えていた力がくうに向かったせいでバランスを失ったのだ。
ブラック☆スターは家を出てからもよく遊びに来てくれていた。
それでも私の心にぽっかり空いた穴は塞がってはくれなくて、そこにすっぽりおさまったのは意外にもソウルくんだった。

「心配性ね」

ベランダの柵に触れていた手が彼の手に包み込まれているのに気づいた私はそう言った。

安堵の笑みを見せたソウルくんがそっと手を離す。それがなんだか勿体なくて私はその手を追いかけ軽く握りこんだ。
彼が驚く。だが驚きを見せたのは一瞬で、すぐにその表情は引っ込んでいつもの顔に戻る。
ソウルくんの手は私の手をぎゅっと優しく握り込んでいた。

「ブラック☆スター、元気にしてるかな」

「心配なら会いに行くか?」

「……そうね…」

ソウルくんの視線がこちらへ向く。その動きは緩慢で、でも隙はない。
私が今繋がっている手を刃に変えて彼の命を狙ったとして、それは必ず失敗に終わるだろう。そんな気がした。

「ううん、」

クスリ。笑うとソウルくんもゆるく笑う。

「今日は、日が悪いわ」

またいつか。そう言うとソウルくんはゆっくり私から視線を外し、真っ黒な月を見上げた。

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