大人になってから book
□成長期
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螺線のように脳内でぐるんぐるんと物事が回る。
両手で包み込んだ湯呑をゆっくりとテーブルに置き、ほう、と一息吐く。
すると向かいに座っていたソウル君が心配そうな表情で私を見、口をぱかりと開く。
「どうかしたか?具合でも悪いのか?」
ため息1つで大げさだわ。無言の代わりに彼へ微笑むと、ソウル君も安心したのか微笑み返す。
「ブラック☆スター、このおうちを出るんですって」
死武専を卒業してからもずっと私と一緒に暮らしていた家なのに。
昨日告げられた言葉を思いだしさみしさを覚えながら、また1つ、ため息をついた。
「俺のマカもそうだよ」という彼のため息混じりの言葉に、
私の脳内ですべての事柄が繋がった気がした。それはソウル君も同じなようで。
「きっと同棲するのね」
「あいつらも長いからなぁ」
私たちも同じくらい長いわ。彼の言葉にそう付け足すと、彼はに、と笑う。
「ブラック☆スターが出るんだとしたら、もうヤキモチ妬かなくて済むなぁ」
ソウル君はそう言って手元の湯呑に入ったお茶をくいっと流し込む。
あら、妬いてたの?笑ってそう聞けばソウル君はしまったと言うように視線を泳がせた。
もう、あの子達には保護者はいらないわね。
私の言葉にソウル君は無言で頷く。
その表情は酷く安堵しているようで、きっと死武専に居た長いあいだ、彼女に対して気を揉んでいたのだろう。
成長期