破面騎士

□すまない
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「ロリ、私が引きつける!」

「上手くやりなさいよ、メノリ!」

『……!』



 大量の虚閃がクラウドに向かった。
 それを無表情で避けていたクラウドだったが、背後からメノリに抱き着かれる様な形で拘束される。
 ぎり、と強まる力に少し眉を寄せたクラウドだったが、腕力で脱出した。
 が、メノリの攻撃によって背後から迫っているロリへの注意が数秒遅れる。



「毒せ、百刺毒娼!!」

『!』

「虚閃…!」



 背後から捕まったクラウドは己の腕ごと服を溶かす毒に目を見開き、その瞬間に正面で虚閃を受けた。
 爆発を避ける様に一旦距離を取ったロリとメノリ。
 じっと煙の先を凝視し、警戒を緩める事無くクラウドの姿を探し回る。



「まさかこの程度で死んだなんて事は無いわよね…!」

「……っ、グリムジョーよりも断然実力は上なんだから…」

『…すまない』

「「!!」」



 ひゅ、と2人の息を吸う音が聞こえた。
 そしてそれと同時に2人して背中に衝撃を受け前に吹き飛ばされる。
 回し蹴りで2人を吹き飛ばしたクラウドは再び走り出すと次は吹き飛ばされている2人の前に出た。



「っ!?」

「な…(勢いが殺せない…っ)」

『………虚閃』



 片手から発せられた巨大な虚閃に目を見開いた2人は赤い虚閃に飲まれ、再び吹き飛んだ。
 が、まだクラウドの攻撃は緩まず2人を真上から下に叩き落とした。
 地面に凄い勢いで落下した2人は血を吐き、たった3回の攻撃で動けなくなった自分達に眉を寄せる。



「く、そ…っ」

「所詮十刃落ちは、…この、程度なの…!?」

『………』



 しゅん、と再び2人の目の前に現れたクラウド。
 倒れた状態で彼女を見上げた2人は眉を寄せ、観念した様に息を吐く。
 それを見たクラウドは微かに目を細めると片手を2人に向け、虚閃を見せた。



「っ…」

「…何、よ」


 やっぱり全然―――…歯が立たないじゃない。



 受けたかなりの衝撃に息を詰まらせた2人。
 そんな中ロリは目を見開き、真っ暗な意識の中に居るかの様な気分に陥った。
 暗闇にたった1人浮かんでいる自分。
 そして周囲から聞こえる己の声。



「藍染様だ!行くよ、メノリ!」

「やっと、やっと見つけた居場所!」

「私達は藍染様の側近よ!」




 楽しかった思い出じゃない…。
 と内心眉を寄せたロリ。
 映像の様に映し出される虚圏での生活。
 何よ、と映像を睨んだロリは微かに目を見開いた。



「…分かってたのよ、敵わない事なんて」

「(…え、)」

「ねぇ、誰か助けてよ」

「(これって)」

「あの時と同じ様に――――!」



 ばっと目が覚めた。
 メノリはまだ隣で眠っているが、起き上ったロリは破壊されている街並みを見渡す。
 そして振り返るとクラウドが立っていた。



「ま、さか」

『私がお前達をこんなにしておきながらすまないが、』

「…治したって言うの…?」

『…ああ』



 その言葉を聞いたと同時にロリがクラウドの胸ぐらを掴んだ。
 身長がクラウドよりもかなり低いロリはクラウドの顔を引き寄せ、ふざけるな!!と怒号を浴びせる。
 そしてばっと手を離すとクラウドは静かにロリを見下した。



「信じてた!!アンタは私達を連れてってくれるって!私達が負傷して動けない事を知ってくれてるって!」

『!』

「…なのにアンタは来なかった…!」

『………』

「私達よりもグリムジョー達を選んで、今は私達よりも死神を選んでる!」




 「何が違うのよ、何が違うの…っ」と顔を伏せたロリ。
 それを見たクラウドも目を伏せるが、ロリはばっと顔を上げると涙ながらに声を張り上げた。



「アンタが私達を連れ出したくせに!!」

《2人だけで寂しいと言うならば、何もする事が無いと言うのなら。……私と共に来ないか》

「なのに…!!」



 「アンタは来なかった!!」「私はアンタが憎い…っ」
 続けざまに紡がれる言葉に目を細めたクラウド。
 そんなクラウドを見たロリは刀を持ち、一気に走り出す。



「死ねぇぇえええ!!」

『…すまなかった』

「っ!?」

『私が、全て悪かったんだな』



 腹部を殴られ、ロリは崩れ落ちた。
 そして倒れると同時にクラウドの顔を盗み見ると歯を食いしばる。
 が、同時に意識も手放した。



「違う、違う…!」

 あんな顔をさせる為に動いたんじゃない…っ


「助けて」

「誰に助けを求めてる?藍染様のお気に入り?」

「違う」

「違う、もっと、もっと昔に―――」



 右から、左から。
 真上からも聞こえる己の声に振り返るロリ。
 が、目の前から聞こえた次の言葉に目を見開いた。



『この手を取れ。仲間を、…お前達の存在意義を見つけよう』

「ああ、そうだ。私は…」



 
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