破面騎士

□再会
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「先程は説明をかなり省いてすみませんでした…」

『……』



 浦原商店の一室を借りて向かい合っている2人は目の前の茶をずず、と飲み沈黙した。
 そんな様子を襖の隙間から、天井の隙間からと様々な場所でこっそりと見ている日番谷達は静かに声を潜めて話している。
 静かな沈黙の中、日番谷達に気づいているクラウドは微かに集中を削がれているが、そんなクラウドに何を思ったのか目の前に座っている楓は目を泳がせた。



「本当にあの子がクラウド隊長の妹なんすか?」

「前世の、ね。死んだ時にはまだ生まれてなかったから初対面らしいけど…」

「にしては吃驚するぐらい似てねぇし…」



 うわー、めっちゃ緊張してるよ。
 と上で目を細めて楓を見ていた日番谷達はちら、と向けられたクラウドの視線に思わず口を閉じた。
 そんな事をしていると、クラウドの前の前に居る徐に彼女が口を開いた。



「私の両親はいわゆる芸能人で…。ってそんな事はどうでも良いんですけど!」

『……ああ。落ち着いて話してみろ』

「はっ、はい!…元気が、無いんです。私が高校生になるにつれ、…自殺した姉を思い出すようで」



 微かに目を見開いた日番谷達は徐に眉を潜めた。
 そんな中ピクリと反応したクラウドはずず、と再び茶を飲むと徐に顔を上げる。
 それを見た楓は顔を伏せ、ぎゅっと膝の上の拳を握りしめた。



「姉と私は全く似てないんですが、…たまに母が私を栞、と呼ぶんです」

『!』

「そしたらその、…転校して来たあなたが私の姉にそっくりで…。嬉しくなったというか、あ、写真を持ってきたんですけど、」

『………』



 鞄から1枚の写真が取り出され、クラウドに手渡された。
 その写真の中に映っていた女子高生は、虚圏で現れた前世の自分の姿そのものだった。
 目の色以外は全く変わらないその姿に目を細めたクラウドは角度を少し変え天井の日番谷達に見せると写真を彼女に返す。



「そ、その…。…髪の毛を黒に染めて頂いて、あ、長さはそのままで良いです!…一目でも良いので、会ってあげてくれませんか?…きっと嘘でも喜ぶと思うんです」

『………解った』

「本当ですかっ!?」

『ああ。一目会うだけだが』

「よろしくお願いします!」



 立ち上がった楓は笑顔を零し、安心した様に小さくため息を吐いた。
 ばっと下げられた頭に小さく頷いたクラウドを見た浦原はばーんと襖を開くと早速、と髪を染める道具を持ってくる。
 そん浦原に目を見開いた楓はささっと入り込んだ浦原に背中を押され、浦原は笑顔で口を開いた。



「ちょっと出といてくださいねー、南雲楓サン」

「え、あ、はい!」


「………じゃ、さっさと終わらせますね」

『すまない』

「いえいえ」



 楓と入れ違いに入った鉄裁がぬん、と顔を近づけしゅーと手際良く髪を染め始める。
 その様子を見た日番谷達はすと、と天井から床に降り立つとおおー…、とそんな様子を凝視し始める。
 僅か数分で出来上がった黒髪を鏡で見たクラウドは入って来た楓を振り返り、楓は大きく目を見開いた。



「ほ、本当にそっくりですね…」

『そうだな』

「はい、カラーコンタクト」

『どうも』



 楓が入り込む前に廊下に出た日番谷達は全く雰囲気の変わったクラウドに襖の向こう側で微かに目を見開いた。
 浦原から受け取ったカラーコンタクトを入れたクラウドは目をぱちぱちと見開き、楓を振り返る。



『じゃあ早速…』

「は、はい!…行きましょうか」

















 数分後、とある路地裏に着いた楓は徐にくるりと振り返った。
 そんな彼女を見たクラウドは微かに目を細め、立てられた人差し指を見る。



「え、えっと、作戦はこうです」

『ああ』

「まず、クラウドさんが私の母の前を通り過ぎて、それに吃驚して固まっている間に私が逆方向から現れます」

『私の出番はそれで終わりだな?』

「はい!そこで母が私に今姉を見たと言って、それで万事解決!」



 びしっと親指を立てて言った楓を見下したクラウドは分かった、と小さく頷いた。
 それを見た楓もはい!と頷き、クラウドと共に路地に入り込む。



「そろそろ母が買い物から帰って…、あ」

『!』



 路地からこっそりと向こう側から歩いてくる女性を見たクラウドは微かに目を見開いた。
 そして徐に目を細めると、懐かしさに頬を緩める。



「でっではお願いします!」

『!…ああ、分かった』



 立ち上がったクラウドは再び路地から顔を出し、タイミングを見計らって歩き出す。
 そうして路地から道に出て数歩。
 ばさ、と袋が落ちる音に視線のみを移動させたクラウドは目を見開いて走り寄った女性を受け止めた。



『!』

「栞…!」



 驚く事は予想していたがまさか抱き着くなんて…!?
 と目を見開いた楓はわたわたと慌てた様に路地裏で動くとはっとした様にクラウドと目を合わせジェスチャーで離して、と伝える。



『…あの…?』

「栞!…栞でしょう…?」

『っ…』



 眉を寄せて目を逸らしたクラウドに女性が涙を流した。
 そしてその様子を陰で見ていた楓も目を見開いて動きを止める。



「クラウドさんは、」

 姉じゃ、ないんですよね――?



 
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