破面騎士

□焦りは禁物
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「…何、あれ」

「分かるわけねーだろ!…ただ、1つ言えるとしたらヤベェことだってことぐれーしか…っ」

『……危険だな』

「…え」



 ぼそ、と呟いたクラウドに抱きかかえられていた本匠千鶴は微かに眉を寄せるクラウドを見上げる。
 そしてその表情を見ると恐怖から逃れる様にクラウドの服の袖をくいと引っ張った。



『?』

「あ…」



 不思議気に己を見下したクラウドを見た千鶴は震える体を押さえ、口を開く。



「わ、私達、どうなりますか?」

『…』



 目を細めたクラウドを一護のクラスメイト達は一斉に見上げ、走る速度を少し上げた。



『…大丈夫だ、私が護る。心配は要らない』



 そう言ってクラウドが安心させる様に微笑んだ時、背後の光が徐々に消え始める。
 そしてその光の中心には背中に蝶の様な羽が現れている藍染が立っている。



『…チッ』

「―――――…私の勝ちだ、ギン、…クラウド。お前達が奪った宝玉は既に私の中に無くとも、私の物だ」



 そう言い放った藍染はその場から一瞬で消え去り、咄嗟に千鶴を下したクラウドの背後に現れた。



『!走れ!!』


「―――!後ろに!!」

『…っ』



 振り返ったクラウドは微かに微笑む藍染を見上げ、動く腕を認識すると同時に喉元を貫かれる。



『―――!?』

「…」



 目を見開いたクラウドを見下した藍染は口元を吊り上げ、そして微かに目を見開いた。
 クラウドの手が、刃を握りしめた為だ。



『……随分、焦っているようだな』

「…何?」



 藍染はぐぐぐ、と押し戻される刀に眉を寄せ、至って余裕の表情を浮かべているクラウドの顔を見る。



『…私の孔の位置を忘れてる程に』



 はっとした表情を浮かべた藍染を見上げたクラウドは口元を吊り上げ、腕に力を籠める藍染を見上げた。



『…致命的誤算を生む程、私を早く殺したかったらしい。……それほど、私が怖いか?』

「っ!」



 押しのけた刃で軽く包帯を裂いたクラウドは己の孔を藍染に見せ、藍染は大きく目を見開くと徐に口を開く。



「…そのようだね。随分と私は君に恐怖を抱いていたようだ」

『まあ、包帯で隠していたからな。忘れていても仕方がない』



 クラウドは一気に眼光を鋭くし、殴りかかる。
 それを見た藍染は刀を引き寄せ、刀で拳を受け止めた。



『…』

「…!」



 藍染は刀の向こうに感じる霊圧に舌打ちをするとその場から飛び退き、その場には巨大な虚閃が直撃した。
 飛び退いた藍染を見たクラウドは刀を取り出し、藍染の目の前に迫る。



『詠え、騎士』

「…」

『―――虚天斬空』



 ぐん、と巨大化した刀は上空の風を斬り、重力に沿って藍染の元に振り降ろされる。
 それを受け止めた藍染は威力に多少顔を歪め、刃を横に弾いた。



『…残念』

「!」



 弾かれた刃から手を離したクラウドは刀に見向きもせず、頬を軽く裂き血を流すとその血に霊圧を乗せる。



『王虚の閃光!!』

「!?」



 藍染は目を見開き、その虚閃を避ける。
 と同時に背後に立つクラウドに再び目を見開き、己に迫る刃に眉を寄せた。



『……っ』



 だが、その刃は藍染に届く事無く首のすぐ側で停止している。



 
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