破面騎士

□動揺
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「ぐ…っ、」

「…立てるか、グリムジョー」

「触んな!!」



 腕に触れかけた腕をパシリと弾いたグリムジョー。
 払われた手を見下した一護は表情を変えずにグリムジョーの腕を掴み、ぐいと引き上げる。



「っ…」

「アイツのトコ行くんだろ。」

「…テメェが勝っただろうが…っ」

「アイツは今、多分藍染に操られてんだ。お前を殺して、元に戻ったアイツが喜ぶと思うか?」

「知る、かよ。テメェ1人で行きやが…」



 言葉を言い終わる寸前、一護の目の前からグリムジョーの姿が消えた。
 手を見下せば何も無く、ばっと顔を右に向ければ、倒れたグリムジョーとその隣に居る゙白゙に目を見開く。



「クラウド…!?」

『…負けたのか、グリムジョー』

「…ああ」

『…ならば死ね』

「!?」



 クラウドの言葉に目を見開いたグリムジョーは目の前に迫る虚閃に体の力を抜いた。
 それを見た一護は急ぐように足を踏み出した。
 が、それを遮る攻撃が真横から一護に直撃する。



「ぐあっ!」

『…ノイトラだな』

「ああ。そのままやってていいぜ。コイツは俺が殺すからよォ」

『愚問だな。分かっているだろう?…負ければ殺す。この男の様にな』


「…はっ、お前もやっと頂点らしく―――…?」



 ノイトラはふと目を擦り、再びクラウドを見た。



 ―――見間違いじゃねェ?



 ノイトラの目には、黒い髪が映っている。また、その長い髪の毛先はまるで消滅するようにさらさらと風に流れていく。



「…おい、クラウド『早くしろノイトラ。…殺すぞ』…!」

「ぐっ」



 ゾクリと背中を駆け巡る汗に目を見開き、ノイトラはその思いを振り払うように一護を蹴り飛ばした。



『…』



 一護が漏らした苦痛の声に口元を吊り上げたクラウドは再び手に意識を集中させ、グリムジョーに向けて虚閃を徐々に巨大化させていく。



「…そんな大きさが、必要か…よ」

『当たり前だ。十刃のお前を殺す為だぞ?』

「…徹底的だ、な」

『…ああ、そうだな』



 霞む視界の中で、グリムジョーは振り上げられる腕をゆっくりと見た。
 そんな時だった。クラウドの背後で悲痛に一護の名を呼ぶ声が聞こえたのは。
 ぼふん、と背後で煙のようなものが溢れ出す。
 2人の隣を風に揺られて通り過ぎる桃色の煙を見たグリムジョーは眉を寄せ、クラウドは大きく目を見開いた。



「――――ノイトラ」

『!?』



 びくりと反応したクラウドはグリムジョーの隣から退き、ある程度の距離を取って、その存在を見た。
 数メートル先に立つ、懐かしき―――ネリエルの姿を。




 (…ネリエル…!!)
 (…チッ。また新たに抹殺する相手が増えたか)
 (ハッ、そう言う割には、目が泳いでるぜ…?クラウド)
 (そりゃあ動揺もするさ、奴は私の――――古き友人)

 (止めろ、止まれ)
 (煩いよ、クラウド・オーデルシュヴァンク。まだ所有権は渡さない)


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