破面騎士

□黒崎一護の死と蘇生
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『―――!スターク』

「あ?」



 窓の外から視線を外したクラウドは、全くの逆方向に視線を移した。
 そのままそちらの霊圧を探れば、井上織姫の元に…破面が、2人いる。



『織姫の元に2匹居る。怪我でもしていたら藍染様の計画に多少の揺るぎが生じるかもしれん。…行ってくる』

「…あ、ああ…」



 そう言って扉を開いたクラウドは響転で織姫の元へ向かった。
 その先では、グリムジョーが既に動いている。



















『―――グリムジョー』

「…あ?クラウドじゃねェか。霊圧は戻ったのかよ?」

『ああ。…何処に行くつもりだ?』

「決まってんだろ?女のトコだよ。アランカルが2匹ぐらい混ざってるみてーだからな」



 そう言うグリムジョーの表情は面白げに歪み、口元は孤を描いている。



『……そう言うことなら、良いだろう。私も行く』

「別にいいぜ?すぐそこだしよ」



 そう言いながら、グリムジョーの右腕は前に挙げられていく。
 その手の平からは虚閃が発動し、そのまま前の壁を破壊した。



『…扉から入るべきだろう、グリムジョー』

「うっせぇな。お前か?ウルキオラの性格組み立てたのは」

『…違うと思いたいな』



 そんなことを話しながら2人はぽっかりと空いた穴から中に入り込む。
 それを見ていた織姫と2人の破面は大きく目を見開いた。



「…ぐ、グリムジョー!?」

「…よぉ。…ウルキオラの居ねェ間にチョロチョロ入り込んで、随分楽しそうな事してんじゃねェか」

「な…っ」

「何よ…アンタどっから入って来てんのよ!」

「どっからって…壁からだろ?」

「何ふざけたこと言ってんのよ…っ」


「良いじゃねェか。誰がやったのか知らねーが、どうせ扉は壊れてたんだからよ」

『…だから止めておけと言っただろう』

「「!」」



 2人が一斉に息を飲み、呼吸を一瞬止めた。



『扉が開いているなら、そこから入ればいいだろうが。…誰がやったか、分からんがな?』

「…っ、クラウド、オーデルシュヴァンク…!?」

「な、なんでこんな所に…っ」

『何故?…藍染様の計画を揺るがす出来事が起きようとしていたからな』

「…ひ…っ」



 ズン、と落とされた霊圧に驚いて膝を着く2人。
 それを横目に、グリムジョーは鼻で嘲笑った。



「…退けよ。」

「!?キャア!」



 床に手をついていたロリを蹴り飛ばしたグリムジョーは表情を変えず、吹き飛んで咳こんでいるロリを見て口を開いた。



「あぁ?加減間違えたか。」

「!グリムジョォォオオ!!」



 グリムジョーの一言を聞いたメノリは右手に虚閃を発動させ、そのまま右手をグリムジョーに向けて振りかぶった。
 それに気づいたグリムジョーはその手を受け止め、目を細める。



「あ…ぁぁあ…」



 恐怖で震えるメノリを前に、グリムジョーは真顔のまま受け止めた右手に虚閃を発動させた。
 メノリの虚閃を飲み込んだグリムジョーの虚閃は、そのままメノリに向かい、メノリを撃破。



「メノリ!!」

「……フン」

「ぁ、あたし達にこんな事しておいてっ、藍染様に殺されても知らないわよ!」

『ああ、それなら安心しておけ、アランカル』

「ぇ…」

『私が藍染様に話をつけよう』



 その言葉を聞いたグリムジョーはニヤリと口元を吊り上げると、ロリにも同様に虚閃を飛ばし、撃破した。



「やっぱ最高だなお前。まともに俺の好みなんだが?」

『…そんな話はどうでも良い。それより、…もしかしてお前のその左腕…この女か?』

「あー…、まあな。」

『そうか。』



 そう聞いたクラウドは織姫に視線を移すと、小さく微笑んだ。
 それを見た織姫が目を見開いていると、目の前にしゃがんだクラウドが口を開く。



『…ありがとう。あの時の約束を、果たしてくれたんだな』

「…!」



 織姫は目を見開くと、ようやく暗がりで見えなかったクラウドの顔が見える。
 それを見て驚いたように声を発した織姫を見て、クラウドは一層笑みを深めると織姫の頭を撫でた。



『ありがとう』

「は、はい…」



 小さく頷いた織姫の頭から手を退けると、クラウドは立ち上がり、部屋の入口へ歩き出した。



「…いいのかよ?俺がこいつを殺すかもしれねェぜ?」

『フン。意味のない嘘はつくな。…腕が治った祝いだ、好きなようにすれば良い』

「!」

『どうせ、一護を助けて戦うつもりだろう?』

「………ああ」

『死ぬなよ、グリムジョー』



 そう一言残し、クラウドは響転でその場を去った。それを唖然と見ていた織姫の傍らで、グリムジョーは静かに口を開く。



「…やっぱ敵わねーな。アイツには」



 そう言ったグリムジョーを見上げた織姫は、微かに目を見開いた。
 その表情はとても優しく、髪を掻き上げている片手で多少隠れているが、確かに頬が赤みを増しているのが見える。



「…来い。アイツの言った通りだ。…黒崎一護を直すために力を温存しとけ」



 
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