破面騎士

□グリムジョー・ジャガージャックとクラウド
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「キャアアアア!」

『…?』



 突然の悲鳴にむくりと起き上ったクラウドは騒がしいハリベルの宮の方角を振り返った。
 何かあったのか、と刀の元へ歩き出した時、こちらに向かう足音が煩く響く。



  バタンッ!!



「クラウド様!」

『…誰だ』

「ア、アパッチです!」



 クラウドが刀を取りそう問えば、慌てた様にそう返したアパッチ。
 そんな彼女の慌てようは尋常ではない。



『…どうし「ちょっと!何勝手に入ってらっしゃるの!?」…なんだ、一体』

「あ!す…すみませ…」



 慌てて頭を下げたアパッチを見下したクラウドは仕方がなくスンスンに視線を寄越した。
 それに気が付いたスンスンは床に膝を着き、口を開く。



「申し訳ございませんクラウド様…しかし緊急事態です」

『一体何が緊急事態なん「こっちにも来た!」…何がだ』

「ひっ…」

『…なんだ、それは』



 入って来たローズの後ろには黒い虫が大量に床を這っていた。
 それを見たクラウドは首を傾げ、その生物を凝視する。



「わ、分かりません…ハリベル様が出かけてから急に現れて…」

「もう駄目ですわ…」



 スンスンは顔を両手で覆い、アパッチに支えられながらクラウドの背後に回る。
 ローズもその場に加わり、三人はもう頼れるのはクラウドだけだと言うような眼差しでクラウドを見上げた。



『…?』



 とりあえず虚閃で粉砕しようと左手を挙げたクラウドは、ふと天井に目を移し動きを止めた。



「?」



 背後の三人もその動作に気が付き、つられて天井を見上げた。
 当の本人は天井から目を離し、虚閃を前方に飛ばして口を開く。



『…グリムジョー』

「…チッ」



 小さな舌打ちと共に天井が破壊され、天井から落下したグリムジョーは地面に着地した。



『…何のつもりだ?』

「んだよその言いぐさは。折角心配してきてやったんだぜ?」



 どうやら悲鳴を聞きつけて来たらしいグリムジョーは虫を見下して可笑しげに笑った。
 それを見たクラウドは灰と化した虫を同様に見下して静かに口を開く。



『問題ない』

「つれねーなァ…」



 対してそう思ってもいないように言ったグリムジョーは背後に視線を移し、ビビッてやんの、と挑発するように言い放った。



「なんだと『藍染様の元に行ってくる』え、あ…」

「「「行ってらっしゃいませ!」」」



 ばっと頭を下げた三人の前を通り過ぎ、クラウドは宮に戻れと一言伝えてその場を去る。


















『…何故ついて来たんだ?』



 藍染が居る宮でクラウドが背後を振り返った。
 背後には案の定、周りを睨むように歩いているグリムジョーが歩いている。



「ああ?別にどうでもいいだろ」

『…はぁ』



 クラウドはグリムジョーにこれ以上何を言っても無駄と判断し、藍染の居る部屋に二人で入り込んだ。



『…藍染様』

「どうかしたのかい?」



 クラウドが呼びかければ、いつも通りに返した藍染は首を傾げた。
 それを見たクラウドはその場で止まり、頭を下げる。



「…」



 そんなクラウドとは対照的に藍染を睨むようにグリムジョーは見上げた。



『…お前も頭ぐらい下げろ』

「いっ…」



 クラウドはグリムジョーの頭を掴むと、力任せに下に下げた。
 その手を掴んだグリムジョーは振り払い、クラウドを睨みあげる。



「っにしやがる!」



 怒ったように勢いよく頭をあげたグリムジョーはぎり、と歯を食いしばってクラウドを睨み、藍染を睨んだ。



『どうもこうもないだろう。何をしている』

「ああ!?」



 クラウドの言葉に意味わかんねぇ!とクラウドを見下したグリムジョーは驚いた様に目を見開いた。



『図に乗るなよグリムジョー。…私の方が実力が上だということを忘れるな』

「っ…!?」



 グリムジョーは自分に掛かる圧力が一気に増したことを頭で理解した途端、床に膝を着いた。
 やっとのことで再び藍染を睨んだグリムジョーは苦しげに拳を床に叩きつける。



『…』

「いいよクラウド。霊圧を抑えなさい。」

『…はい。』

「…っは…」



 抜けた圧力に息を吐き出したグリムジョーは頬を伝う冷や汗を拭い、傍らのクラウドを見上げた。



『…すまなかった』

「…」



 クラウドが差し出した手をグリムジョーは黙って掴み、ぐっと立ち上がった。
 その後、二人で藍染を見上げる。



「…で、何の用なんだい、クラウド」

『はい。先ほどハリベルの宮より謎の生物出現。恐らく現世…または尸魂界の生物かと』

「何故そう思ったんだい?」

『この虚圏には虚しか存在しないはず…ですが、先ほど私が目撃した生物は虚ではありませんでした。』

「…なるほど」



 藍染は一つ頷くと、離れた所に立っている市丸に視線を寄越した。
 それに気が付いた市丸はワザとらしく足音を強調させて二人の前に現れる。



「あれ、クラウドちゃん。」

『…どうも。』

「おはようさん。あ、そうそう藍染隊長。」



 説明しようと口を開いたクラウドを遮るように市丸は藍染に向かって口を開くと、クラウドにチラリと目を向けた。



「なんだい、ギン」

「いや、そんな大層なことやないんですけど…実はゴキブリがどこからか出てきてもうたみたいで。」

「…理由はわかるかい?」

「多分ですけど僕らが尸魂界からこっちに来た時ですかねえ…」

「…そうか」



 藍染は考えるような仕草を取ると、クラウドに目を移した。



「クラウドの要件もそれだろうね。」

『はい。恐らくそのゴキブリなるものでしょう。』

「…まあ放っておけばそのうち絶滅するだろう」

「わかりました。極力殺しますけど放っておきますわ。」

『では我らもそうさせていただきます。』

「ああ。」



 藍染の返事を聞いたクラウドは頭を下げ、グリムジョーの手を引いて歩き出す。



 
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