破面騎士
□孤独な豹の王
1ページ/3ページ
クラウドは今、白い砂漠が何処までも続く虚圏に立ち、霊圧を探っていた。
『…』
が、巨大な霊圧は見つからず、クラウドは範囲を広げ再び霊圧を探り出す。
『…!アジューカス級の虚が…六体?』
その虚達はクラウドの霊圧に感づいたのか、一斉に走り出す。
面白い、と口元を吊り上げたクラウドは砂をまき散らして物凄い速度で走りだした。
『…見つけた』
クラウドは虚達の行く手を阻み、相手の霊圧を探った。
『…一匹、足りない?』
「…」
フッと現れた背後の気配に咄嗟にしゃがんだクラウドは頭上を通り抜けた虚を見、左手から虚閃を発動する。
「!」
その虚は避けたが、他の虚五匹がまとも受け、吹き飛んだ。
それを見た虚は立ち上がり、再び走り出す。
「ぐあ…っ」
『……』
クラウドの前まで迫った虚はクラウドの視虚閃を片目に受け、クラウドは勢いが止まった虚を下から蹴り上げた。
「グリムジョー!」
上空に投げ出された虚をそう呼び、先に吹き飛ばされた五匹はその虚に駆け寄った。
大方あの5体は囮か…、頭の良い奴だ。
そう考えながらクラウドは自分に襲い掛かった虚の姿を改めて目に映す。
その虚は豹のような姿をしており、苦しげにクラウドを見上げ、その眼光を鋭く突き刺す様に睨みあげた。
『…』
「てめ…え…っ」
虚は静かに怒りを滲ませ、痛みに顔を歪ませている。
『…随分アジューカスにしては小さい体だな』
「…何者だ」
豹のような虚に最も最初に駆け寄った大きな虚がクラウドにそう問いかけた。
『…最上級大虚…と言ったら?』
「な…っ」
豹の様な虚の霊圧が膨れ上がった。
そんな中、他の五匹はクラウドの前から飛び退き、クラウドを凝視する。
「…だったら、てめえを喰えばヴァストローデ級になれるっつーことだなァ!」
霊圧を最大限まで上げた豹のような虚はクラウドに向かって走り出し、その体は淡い青の霊圧で包まれている。
それを見たクラウドは無表情のまま左手を前にだし、口を開いた。
『…私と交戦するか。いいだろう』
徐々に左手に霊圧が集まり、やがてそれは球体のエネルギーとなった。
その霊圧の圧力で砂は舞い上がり、虚達に重力が掛かる。
『…』
「…ッオラ!!」
豹のような姿をした虚はそれでも迷いなくクラウドに飛び込み、口を開き虚閃を発動した。
『…いいだろう。認めよう―――』
クラウドのその言葉を最後に豹のような虚は虚閃で吹き飛ばされ、五匹の虚の元へ落下した。
それを見たクラウドは背を向け、歩き出す。
「ぐ…っ」
待てよ、そう言う様に背後の眼光はクラウドを貫き続けている。
それを気にも留めず、クラウドは歩を止める事無く口を開いた。
『…おい虚。名は』
「…グリム…ジョー…」
『…グリムジョーか』
「…」
『…お前は強い。その傷を癒し、虚を食らえ。…そしてヴァストローデまで上ってこい』
「…!」
『お前がもう少し強くなった頃に、もう一度此処に来よう』
「…」
その言葉を残してクラウドは響転でその場から走り去った。
クラウドは自分の宮に戻り、静かに目を閉じていた。
『…』
どうしたものか。さっきの虚、そこらの虚よりは力はある…が、今の力では十刃入りするのは難しいだろう…
一人考え、目を閉じていたクラウドはふと起き上った。
「クラウドー!」
『…』
背中に軽い衝撃が走る。
起き上ったのは頭にぶつかる事を避ける為だった。
『…』
「クラウドってばー!」
『…リリネット』
一瞬脳裏によみがえったネリエルの存在に、目を細めたクラウド。
それを見たリリネットは相変わらずのテンションでクラウドを見上げる。
「何々ー?またへこんでんの?だったらスタークが慰めるって…」
「適当なこと言うなよ、リリネット」
「えー?でもスタークってたしかクラウドのこと…」
「静かにしろ。」
「痛ってー!叩くことないだろ!」
「俺にはあったんだよ」
「んだとー!」
『とにかく黙れ。どうした、何か用か?』
ため息をついたクラウドはそう言うと、リリネットから視線を外してスタークを見上げた。
「ああ、悪ぃな。」
『…フン』
「で?なんか悩んでんの?」
『大丈夫だ。さっさと宮に戻れ2人とも』
「ちぇー」
「ああ。…何かあったら言えよ」
『…ああ』
大丈夫だ、そう返せば素直にその場から立ち去った二人。
それを見送り、クラウドはまた再び目を閉じた。