破面騎士
□現世と流魂街
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『…藍染様、何用でございましょうか』
頭を伏せ、地面に膝を立てているクラウドは目の前に座る藍染に一人静かに問いかけた。
「ああ、来てもらってすまないね。実は…少し現世と尸魂界の流魂街に行ってもらいたいんだ」
『…何故そのような所に?』
現世は分かるものの、尸魂界は死神の巣窟。
かなり危険なことはクラウドでも重々承知している。
「大丈夫。過去の尸魂界と現世に行ってほしいだけだ。過去に行っている間はこの義骸に入るといい。」
『過去?どうやって…』
「それは心配ないよ。」
『…ザエルアポロ…』
無表情ながら声に多少ドスが加わった。
それに足を止めたザエルアポロは離れた位置でクラウドを見下した。
「…僕が作った特殊な機械で過去に行けばいい。」
『…何故過去に?』
ザエルアポロから藍染に視線を移したクラウドはそう問いかけた。
それに頷いた藍染は口元を吊り上げ、口を開く。
「君には現十番隊隊長日番谷冬獅郎、十一番隊隊長、更木剣八、副隊長、草鹿やちる。そして現死神代行、黒崎一護と何らかの接点を作ってきてほしい。」
『…何故…』
「細かい事は気にしな」
『…はい』
「…藍染様。もう準備は整っていますが?」
「そうか。…行ってくれるかい、クラウド?」
『はい』
「ザエルアポロ」
「…ついてきたまえ」
『…』
クラウドは藍染から義骸を受け取り、その中に移る。
義骸の感覚を確認したクラウドはそのまま歩き出したザエルアポロの後をついて行った。
多少の疑惑を抱えたクラウドが去った後、市丸は藍染に向かって口を開いた。
「…ちょっとあの子を使い過ぎやないですか?」
「…そうかもしれないね」
「まああの子はよお働きますし仕事も早い…実力も保証できる。最高の部下のようなもんですしねぇ…。」
「…ああ」
そんな会話が繰り広げられているとは知らず、クラウドはザエルアポロの個室ともいえる研究室に入り込んだ。
「此処に入りたまえ」
『…なんだこの液体は』
「過去へ飛ぶ為の装置だ。早く。」
『…』
「一応三時間後に強制的に此方の世界に戻るように設定しておくよ」
『ああ』
クラウドは液体の中に入り込み、カプセルのようなものの底に深く沈んだ。
眉を寄せたクラウドを見たザエルアポロはすぐさま沢山の装置のようなものを動かし始める。
「いくよ。頑張りたまえ」
『…今だけは、お前を信じる。ザエルアポロ』
「…ああ」
ザエルアポロが最後の一手だ、と言う様に一つのボタンを押した時、液体が動きだし、クラウドの体に纏わり付いた。
『!』
体が浮く感覚。体が透けていく。
「…精々気をつけていくことだな」
『…』
ザエルアポロのその言葉を最後に目の前が真っ暗になり、クラウドは巨大な波に飲み込まれた。