破面騎士

□ティア・ハリベル
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「…クラウド。すまない、治療を…」

『…次は誰だ?』



 はぁ、と仕方無さ気に振り向いたクラウド。
 その表情は居たって無表情だが、ハリベルの言葉を聞いた途端にピキリと青筋が立った。



「…全員だ」

「っのやろー何すんだ!」

「静かにしてくださる?傷にしみますの」

「ああ!?」

「煩い。」

「なんですって!もう一回行って御覧なさいローズ!」

「だから煩いっつてんだろうがスンスン!」


『煩い』



 予想していた通りの展開に思わず頭を押さえたクラウドは煩げに眉を寄せてそう一言放った。



「「「すみません…」」」

「…すまない」


『ああ。…一人ずつここに来い』

「…」



 アパッチを筆頭にクラウドの前に来た三人は僅か30秒で傷が完治し、ハリベルはクラウドに頭を下げた。



『頭を上げろ、お前が悪いわけではないだろう』

「…助かった」

『ああ』

「まったく…貴方達のせいでクラウド様に無駄な時間を…」

「んだと!お前の所為でもあるだろうが!」

「うるせーよ!その言い合いがクラウド様の時間を割いてるんだろうが!」


『分かっているなら今すぐ出ていけ。』



 クラウドの言葉にしまった…、と固まった三人を見、仕方なくハリベルが口を開く。



「…お前たちは帰れ。」

「「「は…はい!」」」

『……』

「…クラウド、また来てもいいか?」

『ならば、お前一人で来い』

「…ああ」

『…ハリベル。』

「?」


『犠牲無き世界など、在りはしない』

「…!」

『…だが、もしその犠牲とやらでお前が死にかけたなら…助けてやってもいい』

「…ありがとう」

『…早く行け。宮の前に三人が待ってる』

「…ああ」



 扉を開いた時、もう一度ありがとうと呟いたハリベルは扉を通り抜け、静かにそれは閉ざされた。
 それを見届けたクラウドは一人、己の拳を見上げ、目を閉じる。




 (助けてやるさ。仲間の為なら、…何度でも)
 (…行くぞ、アパッチ、スンスン、ローズ)
 (((はいっ)))

 (…クラウドが助けてやると私に言うならば、)
 (―――私はお前を命がけで護ると誓おう)


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