破面騎士

□真打登場
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『…死神の科学者』

「なんだね」

『分かっているとは思うが、我々が態々黒腔を貴方に開かせその中を通るのはあくまでも貴方の実験に手を貸す為』

「…何が言いたいのかネ?」


『今後一切、我等が攻撃を仕掛けない限りは攻撃しないと誓って頂きたい。それが貴方の実験が成功か失敗かを貴方が確認する機会を与える条件だ』

「…フン。何を言い出すかと思えば…、元よりワタシはそんな決定的な結果など求めていないのだヨ。ましてや黒崎一護達の為に実験をしてやる必要もない」

『…ならば何故我々を現世に送る?』

「心配しなくても君達には手出しはしない。ワタシも自分の身が惜しいのでネ。ワタシは只…君達が藍染惣右介を相手に何処までやるのか。それを拝みたいだけだヨ」



 そうか。
 と目を伏せたクラウドは深く頭を下げると、開かれた黒腔にグリムジョー達を引き連れて入り込んだ。



「…名前は何と言ったかナ。虚の王」

『クラウド・オーデルシュヴァンク』

「クラウドか…。覚えておくヨ。…君には是が非でも生きていてほしいものだネ。君程人間臭い虚は初めて見た…実に興味深い。」

『…了解した。協力して頂いた例としてなんでも承知しよう。…感謝する』

「フン。早く行きたまえ」



 コクリと頷いたクラウドは前を走るグリムジョー達の元へ全力で走り、数秒も満たぬ内に先頭に躍り出る。



「…話は済んだのか?クラウド」

『ああ、問題ない。…皆、聞いてくれ』

「?」



 全員がクラウドに目を移し、クラウドは前から目を逸らさず口を開いた。



『まず現世に着いたら、各々負傷者の側に立ち、護れ。虚や死神関係無しだ』

「リリネットは俺と一緒で良いな?」

『ああ。…ノイトラ、頼むぞ』

「…あぁ?今頃お前を裏切るかよ」

『…そうか。テスラと共に動け。…頼んだ』

「…チッ」

『私が藍染に斬られようと、藍染には一切近づくな。私が万一死ねば…全力で負傷者を連れて逃げろ』



 その言葉に一瞬無音になったが、ポツポツと了承の声が上がった。
 そのことに口元を吊り上げたクラウドは目の前に見えた光に微かに目を細める。




























『――――…藍染』

「!」



 ズガン、と落とされた斬撃に藍染は即座にその場を離れる。
 落下する死神達が微かに目を見開く中散り散りになる虚達とクラウドを目を細めて見上げる藍染が立っていた。



『随分と早く、ギンや東仙達を斬ったモノだな。まだ貴様も完全体ではないものを』

「君の影響だよ。特にギンはね」

『…何?』


「ギンは、どうやら君と話すにつれ死神に情が湧いたらしい。

   だからこそ、早く決着をつける為まだ早い段階で私に一撃をぶつけた。要は、そんなギンに焦りを抱いたのか、早い段階で虚化したが…もう私には必要ない程に心を乱された」


『…だから殺したと?ハリベルも必要無いと判断した為か』

「…ああ。その通りだよ」

『ふざけるな』



 ごう、と膨れ上がった霊圧に藍染は眉を寄せ、負傷者の側に立っているネリエル達は心配気に空を見上げる。



『ここから先は…私が相手をしよう』

「…それはまた。困ったものだ」



 藍染が口元を吊り上げたと同時に、2人はぶつかり合った。



『…虚閃』



 片手から放たれた虚閃を避けた藍染は刀を振り上げるが、クラウドは足で蹴り上げると視虚閃で藍染の右目を潰す。
 それに眉を一層顰めた藍染はクラウドの背中を大きく斬り、2人は離れた。



『…』

「…」



 クラウドは藍染から目を逸らさず背中に片手を回し、血を取ると霊圧を圧縮させる。



「…!」

『王虚の閃光』



 クラウドの虚閃の範囲はかなり大きく、藍染は直撃しなかったものの羽織が大半以上焼け焦げた。
 それを見たクラウドは背後を振り返り、足を振り上げる。
 すると藍染が吹き飛んだ。



『藍染。私に鏡花水月は効かん…諦めるんだな』

「…」



 瓦礫から起き上った藍染は刀を持ち、クラウドの目の前に迫ると瞬時に背後に回り込んだ。
 それに目を見開いたクラウドは足に力を籠め、藍染の上を通りバク転で回避すると着地する寸前に藍染の肩に触れ、虚閃を発動する。



「…っ」

『…、ぐっ!』



 クラウドが煙に目を凝らした時、背後に現れた藍染によって腹部に刀が突き刺さる。
 目を見開いたクラウドだったが、刀を手放し口を開いた。



『……詠え…騎士』

「!!」



 即座に刀を抜いた藍染は後方に跳び、徐々に鎧に覆われるクラウドを睨む。



『…斬撃虚閃』

「……」



 速度が上がった虚閃を裂け、藍染はクラウドに近づくが、右の刀で斬撃を止められると左の刀によって再び虚閃が放たれた。



「……。!!」



 斬撃を避けていた藍染は人の様な形をした影を見ると上空を見上げた。
 すると、見えた光景に大きく目を見開く。



『虚天斬空!』



 巨大化した刀の刀身が藍染に迫り、それを避けようと動いた藍染だったが、体を覆う縛道に更に目を見開いた。



「縛道の六十一 六杖光牢」

『死ね、藍染!!』


「――――!」



 刀の刀身が藍染に直撃し、藍染は巨大な刀の下敷きとなった。
 そしてそれを見たクラウドは刀を戻し、前に立つ男を遠目に見る。



『…助かった。死神か』

「いえいえ、こちらこそ助かりましたよ。よくもまあ、彼をあそこまで追い詰めてくれたものデス」

『…』

「…おや、黒崎サンもご到着の様だ」


「浦原!藍染は…、…!…お前」

『!…久しいな、死神』



 浦原と呼ばれる男の隣に立った死神。
 基黒崎一心はクラウドを見ると大きく目を見開き、瞬歩でクラウド近づくと深く頭を下げた。



「あの時は助かった!それに地面にめり込んでる藍染もお前のお影みてぇで…。本当にお前には『…!…やはり、まだか』!!…そうみてーだな」



 瓦礫からあふれ出した霊圧に目を細めた浦原達3人は各々刀を構え、立ち上がった藍染の姿を見ると大きく目を見開く。



「完全に宝玉と融合したんスよ」

『……既に死神ですら無いな。化物の枠にも入りきらん』

「…」


「浦原さん!?クラウド!」

『…一護。来たのか』

「お、おう。何だよアレ…、あれが藍ぜ…!!…親父…!?」

「ああ」


「!?なんで親父が此処に「話は後だ。とりあえず…、今持ってる疑問全部取っ払って藍染だけを見てろ。気ぃ抜いたらすぐに死ぬ」…っ」

『…』

「――――クラウド」



 いつの間にか背後に立っていた藍染はクラウドを呼ぶと、再生した片目を撫でると口を静かに開いた。



「相手が私でなければ…。いや、宝玉を従えていた私でなければ戦いは終わっていただろう。大したものだ、クラウド・オーデルシュヴァンク。威張り散らしていたバラガンとは格が違いすぎる」

『…』

「だが――――ここまでだ」



 藍染が刀を構え、それに答える様にクラウドと浦原も刀を構えた。
 数秒程睨みあうと、まず初めに一心が走り出し刀を振り上げる。
 足で止めた藍染は刀を蹴り上げ次に前から攻撃を仕掛けた浦原の刀を腕で受け止めた。



『…』



 クラウドは跳び上がり、隣に現れた人影と共に足を藍染に向かって振り降ろした。
 下では一心と浦原が霊圧で出来た鎖で藍染の動きを止めている。



「!?…貴様…っ、夜一!」

「はぁぁあああ!」



 夜一は連続で拳を振り上げ、クラウドは再び跳び上がり刀を構えた。



『避けろ死神』

「夜一サン!」

「分かっとる!」

『虚天斬空』



 再び刀を巨大化させたクラウドは刃先を藍染に向け、重力に従い藍染を突き刺した。
 刀身の大きさから考えて木端微塵だが、霊圧が溢れ出しクラウドは弾き飛ばされる。



「!クラウド!」

『…っ、助かった…一護』

「大丈夫か!?」

『…ああ』



 ゆっくりと立ち上がったクラウドは藍染を睨み、3人で攻撃を藍染に集中させている様を歪む視界の中眺めていた。



「…!!」



 3人は藍染に吹き飛ばされ、各々この場から離れた。
 それを眺めていたクラウドは走り出そうとしたが、頭を押さえ一護に倒れてしまう。



『…一、護』

「!」

『お前…何を諦めて「よそ見をしている暇があるのかい」!』



 目を見開いたクラウドは藍染の刀を受け止め、跳び上がると虚閃をぶつけた。



「…」

『斬撃虚閃』



 刀を振り上げ、虚閃を交えて藍染の刀と打ち合う。
 藍染は虚閃を避けながらであっても全く動揺を見せず、クラウドと応戦していた。
 そしてクラウドが振り上げた足を掴むと投げ飛ばす。



『…っ、』



 数秒後には浦原達も地に落ち、ピクリとも動かなくなる。
 それを見た一護は大きく目を見開き、唖然と3人の名を呼ぶと立ち上がったクラウドを見て小さくよかった、と呟いた。



『…藍染!!』

「…!」



 藍染は斬撃を片手で受け止めるが、刀身は腕を斬り落とし頭部を大きく斬った。
 そのことに藍染も少なからず驚いたようだが、霊圧を籠めた蹴りによってクラウドは吹き飛ばされてしまう。



「……さて。敵も殲滅した。――――後は尸魂界の空座町に進行するのみ」

「!待…っ」



 手を伸ばす一護を見下した藍染はふっと口元を吊り上げると踵を翻し、穿界門を潜り抜けると姿を消した。



 
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