破面騎士

□分裂、そして走馬灯
1ページ/1ページ




「―――…一護を離して」

「っ!」



 ノイトラは即座にその場を離れ、ネリエルの攻撃を回避した。
 ばっと視線を戻すものの、もう既にその場には何もない。



「チッ…」

「大丈夫、一護」

「あ、ああ…。…ネル、なのか?」



 唖然として聞く一護に笑顔で頷くネリエル。そんな中、ネリエルの背後に突然クラウドが現れた。



「っ!」

『流石、速いな―――ネリエル』

「…クラウド…?」

『久しいな。早速聞くが、お前は私の敵だな?』

「…貴方、クラウドじゃないわね?」

『何を言っている?私はクラウド・オーデルシュヴァンクだ』



 数秒の間無言で見つめ合った2人は同時に刀に手を掛けた。
 それを見ていたノイトラ、グリムジョー、一護が同時に目を見開くと共に2人はぶつかり合う。



「…ぐ…っ」

『…軽い。弱くなったか?ネリエル』



 数メートル地面を転がったネリエルはすぐに体制を立て直し、口元を吊り上げて皮肉気に口を開いた。



「いつまでクラウドの真似をしているつもり?偽物さん」

『お前こそ、いつまで「クラウドは私に攻撃出来ない!!」…何?』

「それに、クラウドの髪は綺麗な白よ。目の色は赤。それに―――クラウドは楽しみを笑顔では表現しない。嬉しさを表現する…そんな乏しい表現力しか無かったわ」

『分かったような口を「さっさとそこから出ろって言ってんのよこの偽物野郎!!」…!』



 突然の豹変に一護を筆頭にその場に居た全員が動きを止めた。
 そんな中、クラウドは突然笑い出す。



『あはははは!面白い奴もいるもんだ!』

「…さっさとそこから出て。目障りよ」

『煩いな。この体は私のモノだ。私はクラウドで、今眠ってるあの女も私なんだよ。』

「…そう。どうしても出る気はないのね」

『?』



 ゆっくりと立ち上がったネリエルを見、クラウドは一つ首を傾げる。
 そんな中、刀を持ち上げ目の前に構えたネリエルは口を開いた。



「―――クラウド。」

『あ?』

「アンタの事じゃないわ。クラウドを呼んでるの。…クラウド、お願い、早く起きて。じゃないと私…貴方に攻撃しなきゃいけなくなるわ」

『…』

「だからお願い。早く起きて…、―――貴方は、私の騎士なんでしょう?」

『…!な…っ』



 突然クラウドは一人頭を抱え、膝を着いた。
 その間にもその体内では絶え間なく大きな振動がドクンと続いている。



『っ、出て、来るな…!』

「クラウド!」



 少し離れた場所に居る一護が叫んだ。
 そちらに目を向けたクラウドは苦痛に顔を歪ませる。



「お前は強いだろ!?負けんな!」

『…っ、黙れ「クラウド」…あの女の名を呼ぶな!』

「…お前等」



 グリムジョーの傍らにはいつの間にか立っていたウルキオラとスタークがクラウドを見据えていた。



「クラウド、目を覚ませ」

「ったくめんどくせーな…さっさと起きろよ、クラウド」



 紡がれる言葉に呼ぶな!と叫ぶクラウド。
 そんなことを気にせず、その場に居る誰もがその名を呼び続けた。



「お願いよ、クラウド」

『ぐ…っ、ネリ、エル…』

「っ、私は信じてるわよ!クラウド!!」



 プツン、とクラウドの何かが弾け飛んだ。
 それを感じ取ったクラウドは瞬く間に2つに分裂し、2つは同時に地面に倒れこむ。



『…っ、』

『く、そ…』



 同時に起き上った2人は全く真逆の容姿をしている自分同士を目に映し合った。
 金色の眼光が鋭く赤を射抜く中、本物のクラウドは眉を寄せ、一言藍染様、とつぶやく。



『クラウド…っ、』

『…お前は、栞か?』

『!!』



 栞、という名に首を傾げる一護達。
 それを目に映したクラウドは小さく呟くように口を開いた。



『私の、前世の名だ』

「え…」



 思わずネリエルが声を発する中、何故、と黒いクラウドが口を開く。



『…へぇ、覚えてたんだ。自分の名前』

『…いや、正確には思い出した、だ』

『…なんで思い出したワケ』

『簡単な話だ。―――藍染様が私を縛っていた鎖から私の霊圧を吸い上げ、その霊圧から私の前世の記憶を取り出し、お前を作り出したのだから』


『!』

『そうだろう?…栞』

『何さ。他人みたいに…、あんたと私は同じだろ!?』

『違うさ。お前と私は違う』



 そう言って立ち上がったクラウドは髪を掻き上げ、眉を寄せながら呟くように口を開く。



『…馬鹿馬鹿しいことをしてくれる、藍染様も』

『…っ、煩いな!私はアンタで、『それがどうした』…どうしたって…!』

『私は怒っているんだ。よくもウルキオラを、グリムジョーを…ましてやネリエルに攻撃してくれたな』

『っ…』



 ぐ、と俯いた栞を見、クラウドはすっと目を細めた。



『まるで昔に戻ったようだ。…あの時の私その物だな、その姿は。』



 その言葉を聞いた栞は悔しげに歯を噛み締めると立ち上がり、刀の刀身を地面に向ける。
 それに目を見開いたクラウドは即座に同じように刀を持ち上げた。



『…勝負しようよ、クラウド』

『…ああ、そうだな。栞』



 ニヤリと口元を吊り上げた栞と眉一つ動かさないクラウドは目を合わせ、同時に口を開く。



『『…詠え、―――騎士』』



 刀が地面に落ち、そのまま消え去る。
 それと同時に風が2人を各々包み込み、その風が消え去ると共に2人の騎士が出現した。



『勝負だ』


 生きた、かったなぁ…


『勝つのは私だけどね』


 殺してやる…っ、あいつ等全員!!


 ―――懐かしい、記憶が駆け巡る。

 ああ、そうだ。…私は―――死んだんだったな…、たった、1人で。




 (悲しい、悲しい記憶が蘇る)
 (嫌だよ、思い出したくない)
 (…それでも)
 (私達の゙真実゙はそこに在る)


.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ