破面騎士

□新しき日常へ
4ページ/5ページ




「檜佐木、狛村」

「…隊長…!」

「…東仙」



 しゅん、と2人の前に姿を現した東仙は静かに顔を伏せ、一言、小さくはっきりと2人に向けて言い放った。



「…すまなかった」

「…お亡くなりになったのかと思いました…!俺達と戦い、東仙隊長の喉を裂いた後、藍染に斬られて…!」

「クラウド・オーデルシュヴァンクによって、傷は全て回復している。…そうか、やはり私は…あの時、藍染様に…」



 胸元に手を置いた東仙は伏せていた目を上げ、頭を下げた。
 それを見た檜佐木は驚いた様に目を見開き、狛村は静かに見据える。



「すまなかった…。本当に、すまなかった」

「…東仙」

「!」



 肩に置かれた手に顔を上げれば、狛村は静かに口を開いた。



「…戦いの後、貴公に伝えられなかった事がある。聞いてくれ」

「……ああ」

「…貴公は戦いの前に言っていた。儂と貴公はいずれ戦う事になる事を知っていた、と。…儂も、戦いの最中に同じ事を感じていたのだ。恐らく檜佐木も同様に」

「!」

「儂は、今までの我々の関係は仮初めだった様に思う。…だからこそ、我々は刃を交え、今こうしている様に心から解り合う運命だったのだ」

「…俺達は、隊長を斬りました。許してくれなんて言いません…。ただ、…自分を捨てた様な、犠牲にしたような復讐はしないでください…!」



 2人の言葉を聞いた東仙は涙を流し、その涙に気が付いた東仙は片手で目元を覆った。
 それを見た狛村は己の胸元に拳を当て、東仙、と呼びかける。



「貴公が死ねば、貴公の友の時と同じように儂や檜佐木の心にも穴が空くのだ」

「…ありがとう、檜佐木、狛村。…私は、檜佐木…お前に斬られた時、虚化で視力が戻っているにも関わらず何も見えなくなった。友であった、彼女の姿さえも」

「!」

「私は間違っていた…。己の事ばかりを考え、私の事を思ってくれている2人の事を何も理解していなかった。こんな私が、許されても良いのだろうか」

「…隊長は、隊長の正義を貫いた…ただそれだけです。…俺は、もうとっくに許してます…!」

「…儂もだ、東仙。貴公と分かり合え、満足だ」

「ありがとう…、本当にありがとう」



 そう言った東仙を見下した狛村は微笑み、檜佐木は目尻の涙を拭うと嬉しさを噛み締める様に微笑んだ。



「生きていて…よかった。オーデルシュヴァンクには感謝しなければならないな…」

「…はい。その時は、俺も一緒に行っても良いですか」

「…ああ、勿論だ」




 (…そう言えば隊長、)
 (ん?なんだ、檜佐木)
 (目は…)
 (もう見えていない。…俺はそれで良いと思っている。もう虚化も使わないと決めた)
 (…そうですか)
 (ああ。だが、檜佐木や狛村が殺されてしまった時はどうなるか分からないが…)
 (…隊長…!)
 (きっともう私は隊長には復帰出来ない。だから檜佐木、私の事は東仙と…)
 (隊長は隊長です!)
 (説得出来る事を信じている、東仙)
 (狛村…!)

 (俺は何が何でも認めませんからね…!東仙隊長と呼びながら次の隊長も隊長と呼んで…)
 (あああ、檜佐木落ち着いてくれ…)


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ