破面騎士
□新しき日常へ
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「檜佐木、狛村」
「…隊長…!」
「…東仙」
しゅん、と2人の前に姿を現した東仙は静かに顔を伏せ、一言、小さくはっきりと2人に向けて言い放った。
「…すまなかった」
「…お亡くなりになったのかと思いました…!俺達と戦い、東仙隊長の喉を裂いた後、藍染に斬られて…!」
「クラウド・オーデルシュヴァンクによって、傷は全て回復している。…そうか、やはり私は…あの時、藍染様に…」
胸元に手を置いた東仙は伏せていた目を上げ、頭を下げた。
それを見た檜佐木は驚いた様に目を見開き、狛村は静かに見据える。
「すまなかった…。本当に、すまなかった」
「…東仙」
「!」
肩に置かれた手に顔を上げれば、狛村は静かに口を開いた。
「…戦いの後、貴公に伝えられなかった事がある。聞いてくれ」
「……ああ」
「…貴公は戦いの前に言っていた。儂と貴公はいずれ戦う事になる事を知っていた、と。…儂も、戦いの最中に同じ事を感じていたのだ。恐らく檜佐木も同様に」
「!」
「儂は、今までの我々の関係は仮初めだった様に思う。…だからこそ、我々は刃を交え、今こうしている様に心から解り合う運命だったのだ」
「…俺達は、隊長を斬りました。許してくれなんて言いません…。ただ、…自分を捨てた様な、犠牲にしたような復讐はしないでください…!」
2人の言葉を聞いた東仙は涙を流し、その涙に気が付いた東仙は片手で目元を覆った。
それを見た狛村は己の胸元に拳を当て、東仙、と呼びかける。
「貴公が死ねば、貴公の友の時と同じように儂や檜佐木の心にも穴が空くのだ」
「…ありがとう、檜佐木、狛村。…私は、檜佐木…お前に斬られた時、虚化で視力が戻っているにも関わらず何も見えなくなった。友であった、彼女の姿さえも」
「!」
「私は間違っていた…。己の事ばかりを考え、私の事を思ってくれている2人の事を何も理解していなかった。こんな私が、許されても良いのだろうか」
「…隊長は、隊長の正義を貫いた…ただそれだけです。…俺は、もうとっくに許してます…!」
「…儂もだ、東仙。貴公と分かり合え、満足だ」
「ありがとう…、本当にありがとう」
そう言った東仙を見下した狛村は微笑み、檜佐木は目尻の涙を拭うと嬉しさを噛み締める様に微笑んだ。
「生きていて…よかった。オーデルシュヴァンクには感謝しなければならないな…」
「…はい。その時は、俺も一緒に行っても良いですか」
「…ああ、勿論だ」
(…そう言えば隊長、)
(ん?なんだ、檜佐木)
(目は…)
(もう見えていない。…俺はそれで良いと思っている。もう虚化も使わないと決めた)
(…そうですか)
(ああ。だが、檜佐木や狛村が殺されてしまった時はどうなるか分からないが…)
(…隊長…!)
(きっともう私は隊長には復帰出来ない。だから檜佐木、私の事は東仙と…)
(隊長は隊長です!)
(説得出来る事を信じている、東仙)
(狛村…!)
(俺は何が何でも認めませんからね…!東仙隊長と呼びながら次の隊長も隊長と呼んで…)
(あああ、檜佐木落ち着いてくれ…)
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