破面騎士

□封印と終戦
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「…終わった…?」

『…いや、まだ分からない』



 じっと舞う砂埃を見下していたウルキオラは振り返ると大丈夫だ、とクラウドに声を掛ける。
 その言葉に頷いたクラウドは一護の手を引くと地面に降り立ち、刀剣解放を解いた。



『大丈夫か、皆』

「技をぶつけただけなので…、問題はありません」


「お前達も、大丈夫か」

「「「はい」」」



 まずテスラが応え、ハリベルの言葉にアパッチ達も頷いた。
 そしてその後もぱらぱらと応答が発せられる。



『そうか。…よかった』

「―――!…クラウド、」



 ネリエルの言葉に振り向いたクラウドはその視線の先に目を移し、一護と同時に目を見開いた。



「…っ、く、そが…!」

「!…まだ起き上れるのか」

「……っ、」



 ウルキオラは膝を着いた一護の前に立つと静かに藍染を睨み、ネリエルは一護を支える様にしゃがみ込んだ。
 そしてグリムジョーやノイトラ、スターク達がクラウドの隣に立つ中、パキ、と音が響く。



「!」

「…君達の負けだ。見ろ、斬魄刀が消滅し始めている。それはつまり、私に斬魄刀などもう必要ないと宝玉が判断したという事だ。…黒崎一護は負傷し、クラウドも他の死神達やお前達の治療の所為で体力は残り少ない」

『…』

「クラウドと黒崎一護が居ない今!私に敵う者などいないのだ!今度こそ終わり…!?」



 ドン、と藍染の胸元から光が溢れ、その現象が数か所で現れた。
 その事に目を見開いた藍染は数歩下がり、胸元を凝視する。



「な…!?鬼道か!!くそ、こんなもの…っ」

「……やっと発動しましたか」

「!」



 目を見開いて振り返った藍染は地面に着地した浦原を見ると眉間に皺を寄せ、途轍もなく低い声で名前を呟いた。



「貴様の仕業か…!!」

「…ええ。その鬼道は、貴方を倒す為だけに開発しだ封印゙です。貴方と私がこの戦争で最も最初に戦った時、他の鬼道に乗せて撃ち込んでおいたんスよ」

「封印だと?…残念だったな、それは発動する前に消え去る事になるだろう!見ろ!この斬魄刀を!今私は宝玉によって更なる進化を…!……、な」



 パキ、と音を立てて藍染を覆っていた虚の様な体が砕け散り、その下から藍染本来の姿が現れた。
 それを見た藍染は大きく目を見開き、己の手を唖然と見下す。



「な、んだこれは…!!」

『大方、それが宝玉の意志と言った所か』

「ええ。あの時に撃ち込んだ封印が今発動した…それはつまり、貴方の力が弱り切ったからっス。それはある意味、クラウドサンが言っていた…貴方に無かったもののお陰っスね」

「俺等がまだアンタ側についていて…、もしもアンタがまだ市丸を、ハリベルを、東仙を斬っていなけりゃ…もしかしたら免れていた状況かも知れねーな」



 そう行ったスタークを見た藍染はぎり、と歯を食いしばり、体を貫く様に膨れ上がった光に背を丸め、拳を固めた。



「…クソ…!何故だ!!何故だ浦原喜助!!何故それ程の頭脳を持っていながら、あんなものの下に着く!?クラウド…!お前もだ!お前こそそれ程の実力と力を持っていながら!!死神側に着いて、あんなものの下にくだれば、必ずお前は後悔する!!」

『…あんなもの?』

「…霊王の事っスね…、そうか、貴方は見てしまったんスね?…霊王の存在が無ければ尸魂界は分裂する…霊王は楔なんス。楔を失えば崩壊する。…世界はそう言うもんなんスよ」

「それは敗者の理論だ!勝者は常に、世界がどういうものなのかではなく、どうあるべきなのかを語らなければならない!!私は…!」



 ぐん、と藍染を飲み込んだ封印はやがて停止し、辺りは静寂に包まれた。
 そしてその様子を目を逸らす事無く見送った破面達は立ち上がると封印に近づき、クラウドを筆頭に小さく頭を下げる。



『…我等を導いてくださり、ありがとうございました。…結末はどうあれ、貴方のお陰だ』


 ありがとう、ございました



 クラウドの言葉は晴れた空の下で静かに響き渡り、静かに…ただ静かに終戦を仲間達に知らしめた。




 (…?…そう言えば、浦原殿)
 (?何スか、クラウドサン)
 (確か死神達は大量の虚に襲われている筈では…)
 (……あ)
 (忘れて来たのかよ!?)
 (あ、でも大丈夫っスよ!皆サンピンピンしてましたし…)
 (大丈夫!ペッシェとドンドチャッカの話だと終わってるらしいよ!)

 (流石ネル様!我々に見せ場を!!…ゴホン、しっかりインフィナイト・スリックで蹴散らしましたよ!)
 (嘘付け!!つか無駄にカッコ良く言ってんじゃねーよ!)
 (ヒドイッ!!)


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