破面騎士

□焦りは禁物
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「…やはりな、クラウド」

『…ええ。…やはり私には貴方は殺せない』



 自傷気味に笑ったクラウドは片隅にスタークを思い出し、動かすことの出来ない刀をその場から1ミリも動かさず再び口を開いた。



「…」

『何故なら―――…、嘘であっても、私を、私の仲間を護り、貴方がその仲間になってくれたからだ』



 静かに藍染が振り返り、クラウドは目が合うと眉を寄せ微かに感じる霊圧に目を細める。



「…」

『嘘であったとしても、私達を呼び寄せ、関係を築き――――…私の大切なものを作ってくださった』

「…」


『貴方には感謝してもしきれない。…そして、殺せない。………だから、…私は貴方のお陰で出来上がった糸を手繰り寄せて此処に来てくれた―――…私の友人に貴方を任せる』



 ドン、と地面に霊圧が降り立ち、その音と霊圧に振り返った藍染は無表情のまま背後に立つ黒崎一護を見た。



『…彼なら貴方を倒せるだろう。…一護なら』

「…」



 一護と藍染の視線が合い、一護は地面に肩に担いでいた一心を降ろすと小さく口を開く。



「…ありがとな。親父」

『…一護、任せた』

「…ああ」

『私はお前の友人達を護る事にする』



 振り返った一護にそう言ったクラウドは刀剣解放を解き、唖然と一護を見ている啓吾達の側に走り寄った。



『…無事か』

「は、はい…。つかあれ…」

「一護、なの…?」

「髪伸びてるし…、髪の所為かな。…背も伸びてる」

「…」



 啓吾達が唖然と一護を見ている中、一護は霊圧を探る為に目を閉じ、すぐに目を開く。



「…よかった。遊子と夏梨は無事みてーだ」



 そう呟くとクラウド達の方向に目を移し、少し微笑むと小さく口を開いた。



「…竜貴、啓吾。」

「「!」」

「水色」

「…」

「本匠」

「!」

「観音寺」

「…」



 名を呼ばれた各々は恐怖と困惑の表情で一護を見上げた。
 その視線を受けた一護はクラウドに目を移す。



「そこに居てくれ。クラウドが居るから安全だ」

「ど、どういう意味だよ!一護!!」

「―――――…黒崎一護」

「…」



 藍染の言葉に一護は視線を移し、クラウドは啓吾達の前に立った。



「…本当に君は、黒崎一護か」

「…どういう意味だ?」

「本当に黒崎一護なら…、落胆した。…今の君からは、霊圧を全く感じない。君は進化に失敗したのだろう。つまり君は、私が与えた最後の機会を取り零したのだ」



 一護はそう言って片手をこちらに伸ばした藍染を見、徐に視線をクラウドに移す。



「…クラウドも落胆している事だろう。とても脅威には「藍染」…」

「場所を移そうぜ。…これ以上、クラウドに負担を掛けたくねぇ」

『…』

「無意味な提案だな。それは私と戦う事の出来る者が口にする事を許される事だ。…場所を移そうと、貴様の代わりにクラウドが戦う事になるのは必然だ…」



 藍染は突然顔を一護に掴まれ、強制的に上空に飛び上がると風を切りクラウド達の居る場所から離れ始めた。



『…一護』

「あ、あの…。一護は…」

『…大丈夫だ。アイツなら勝てる。怪我の治療をしよう、痛い箇所はあるか?』

「!…そ、それより、貴方のその…」

『…ああ、これは大丈夫だ。元々空いている孔だから』



 クラウドは片手で孔に手を振れると近くに居た竜貴の頬に手を翳し、擦り傷を再生する。



「うわ、凄い」

「すぐ治った…」

『ほら、遠慮せず来い』



 おずおずと近づいて来た啓吾達の傷を全て回復したクラウドは立ち上がり、一護と藍染の霊圧を探った。



「…どうなってますか、一護」

『一護が藍染を斬ったな』

「って事は…!」

『勝ったとは言い切れんが、有利には立っている』

「よかった…」

『…大丈夫だと言っただろう?一護は強い』

「はい!」



 笑顔で返事をした啓吾を見たクラウドは水色達の表情が少し和らいだのを見ると徐に口をく。



『そう言えば、私の自己紹介がまだだったな。クラウド・オーデルシュヴァンクだ。見た通り、私は人間ではない』

「!…一護と同じ奴じゃ、ないんですよね」

『ああ。私はむしろ一護の敵対する存在である虚だ。お前達も霊圧が高いからな、他の虚に襲われたことがあるかもしれん』

「!!」



 竜貴が大きく目を見開き、多少後ずさった。



『…信じなくてもいいが、私は人間を喰わない。一護の為にお前達を護る。』

「…僕は信じるよ?」

「お、おお!俺も!」

「わ、私も…」

「ザッツライトだ、ボーイズ&ガールゥ!」

「…私も、信じる」

『…そうか、ありがとう』



 クラウドは微笑み、それを見上げた啓吾達は一様に顔を赤らめた。





 (クラウド)
 (!ウルキオラか。皆来たのか?)
 (僕等もおるよ?)
 (うぉわ!?白っ!)
 (…大丈夫だ、私の仲間だから)
 (黒崎一護のトコに行かなくていいのか?)
 (行って来ても良い、人間は私達が見る)
 (ありがたいがな、ハリベル。…考えてみろ、初対面でその上目付きの悪いお前達に囲まれてみろ)

 ((((((((((((………ああ)))))))))))))


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