破面騎士

□井上織姫
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『…っ、藍染…様……』

「すまないね。だがすぐに再生する。彼女の能力が本物ならば」

『…っぅ…』



 激痛に耐えながら自分の足元に視線を移せば、そこに転がっているのは自分の腕。



「――――――藍染様、連れてまいりました」

「ああ、入っていいよ」

『…っ』


「!」

「っ…!?」



 部屋に飛び散る血にウルキオラは少し反応したが、織姫は耐えられなくなったように目を逸らした。



「…井上織姫」

「っは…はい…」

「彼女の腕を治して見せてくれないか」


『…』

「で、でも…」

「彼女の腕を切り落としたのは君の能力を見るためだ。」



 治さないと斬り落とした意味がない、というように言った藍染に再び震えた体を抑え織姫はクラウドの傍らに座り込む。



『―――っ』

「す、すみませんっ痛い…ですか?」

『…いや、気にせず続けろ』

「は、はい…」

『……』



 クラウドは物凄い速度で傷が時間を戻す様に再生する様を見下し、目を微かに見開いた。



「……な、治しました」



 織姫は恐怖に染まった目で藍染を見上げると、藍染は口元を吊り上げ口を開く。



「―――ああ、素晴らしいね」

『…ええ。素晴らしい能力です。』

「彼女を連れてきて正解だった。」

「…」



 そう会話する2人を見ていたウルキオラは恐怖で未だに震えている織姫にチラリと目を移す。



「では元の場所に戻しておいてくれえるかい、ウルキオラ」

「はい」



 そう伝えると藍染は扉を開き出て行った。
 それを見たウルキオラも続く様に扉を開いたが、響いた声に手を止める。



『―――井上織姫』

「!」

『…助かった。出来れば、私の他にも腕が無い奴がいてな。…できれば治してやってほしい』

「…」



 織姫は何も答えずにウルキオラによって開かれた扉を潜り出て行く。
 只、扉の隙間から見えた笑顔にクラウドは少し目を見開き腕の感覚を確かめるように手の平を動かすと、虚空を見上げた。



『―――あと少し。あと少しで―――…』


 戦争が始まる。

 それは恐らく死神と虚による避けられぬ戦い。




 (あの日から)
 (あの日、彼女と会った時から私は、)
 (戦争が嫌いで、争いや仲間が死にゆく事が嫌いで仕方がない)
 (それは恐らく相手に黒崎一護が居る時点でとても非道なものとなるだろう)

 (―――嫌なものだな…仲間や友の血を見る未来は)


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