破面騎士
□井上織姫
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「―――井上織姫」
「!」
小さな窓から見える月を見上げていた時、真後ろから聞こえた感情のない冷たい声に振り向けば自分をここに放り込んだ張本人が立っていた。
「…はい、」
消え入りそうな声で返事をすれば、足を鳴らしながらこちらに近づくウルキオラ。
それに少し後ずさる。
「来い。藍染様がお呼びだ」
「!」
藍染、という言葉にぶるりと体が震えた。
その様子を見たウルキオラは、やはり表情を変えずに織姫の腕をつかみ扉を潜り抜けた。
「―――ウルキオラ」
「…なんだ」
グリムジョー、と言えばああ?と返事が返ってきた。
ウルキオラの背後から前を覗けば見えたのは水浅葱色。
「なんでその女を連れてんだ?」
「…藍染様の命令だ」
「へぇ?その女使えんのか?」
「今からそれを確認なさる」
「そうかよ。だったら早く行け」
もう用が無いというように背を向けたグリムジョーを見たウルキオラは織姫を連れて再び歩き出した。
――――気に入らねェ。
少し距離の空いた白い後ろ姿に苛立ちを覚える。
―――――…今日は、アイツの霊圧の匂いがした。
ウルキオラから微かに感じる霊圧に唇をぎり、と噛む。
―――気に入らねェ。アイツはクラウドに会える。その事実に怒りが倍増された。