破面騎士
□存在末梢
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『…』
クラウドは一つの扉を開き、ずらりと並ぶ椅子の一つに腰掛けた。
そしてその椅子が並ぶ先には藍染が腰かけ、集まった十刃達を見渡す。
「突然招集をかけて悪いね。」
『…いえ。それよりご用件を』
静かに藍染の言葉を聞いていた十刃全員を代表してそう問いかけたクラウドは藍染を見、言葉が発せられるのを数秒間待った。
「ああ。実は…」
「藍染様。ここは私に」
「ああ。」
藍染を遮るように口を挟んだのは東仙。
東仙は相変わらずの無表情でクラウドを見下すと徐に口を開く。
「突然だが、我々は第一十刃クラウド・オーデルシュヴァンクを幽閉することにした」
『!』
「な…どういうことですか藍染様!」
ハリベルが驚いたように藍染に問いかけ、クラウドは微かに目を見開き藍染に目を移した。
「クラウドの力は強大だ。だが、クラウドの力はその内この虚圏を崩壊に導くほどの力となる。」
「それがどうした…こいつの力は戦力になるだろうが!」
グリムジョーは机を殴り、藍染に怒声を浴びせた。
一気にピリピリとした雰囲気に包まれた室内は、主にクラウドと関係が深いスターク達などによるものだ。
「グリムジョーの言うとおりだ。だから僕たちはクラウドを幽閉することにしたんだ」
「どういうことだ?」
「簡単な事さ。クラウドの力、能力を敵に知られたくないんだ。その為、クラウドはこれからこの場所から存在を抹消し、隠された切り札にしようと思う。」
「…気に入らねえな」
「ノイトラ。藍染様になんという口を…」
「いいよ、要」
「…はい」
「君たちがどう反抗しようと君たちが決めることではない。…決めるのはクラウドだ。」
藍染の言葉と共に皆の視線がクラウドに注がれた。
それを受け止めたクラウドは目を逸らす事無く藍染を見ている。
「やってくれるね?クラウド。」
『…了解、しました』
「クラウド!?」
思わずグリムジョーを筆頭にハリベル達も立ち上がり、クラウドを驚いた様に見下す。
が、そんな中でもクラウドは表情を崩す事無く口元を吊り上げている藍染を見上げた。
『…』
「ありがとう。では早速ついてきたまえ」
『…はい』
「待てよクラウド。お前…」
『…』
スタークの困惑が混じった声色に足を止めたクラウドは横目にスターク達を目に移した。
それを見た藍染は一度振り返り、再び視線を前に移すと口を開く。
「…先に行っているよ。」
『はい』
藍染の後を市丸、東仙も付いて行き、部屋にはグリムジョー、ハリベル、スターク、ノイトラ、クラウドのみとなった。
「なんで了承なんてしやがった!」
『…悪い』
「…何か、考えでもあるのか」
『…』
クラウドは黙って首を振る。
それを見たグリムジョーはぎり、と歯を食いしばりクラウドの襟を掴み上げた。
「だったら尚更…っ」
『…もう、疲れた』
「…っ!…あの方の事を…まだ…」
『…』
「…ふざけんなよ…」
『…、』
「あいつの事はもう忘れやがれ!」
『あいつをあんな風にしたお前が言うな!!』
「うるせえ!お前が消えることを、お前が一人になることを一番嫌がってたのはあいつだっただろうが!!」
『…っ』
「…おい?話が見えねぇんだが」
「あいつって誰の事だ」
「…クラウドが唯一相棒と呼べるお方の事だ」
「相棒?俺は知らねえが」
「お前等が来る前に俺が殺した。」
「…成程な。クラウドがてめえを毛嫌いしてる意味が分かったぜ」
『ネリエルは死んでなどいない…』
「…」
「クラウドちゃん。そろそろ来ぃ。」
『…はい』
「クラウド!」
『…悪いな。……ありがとう―――』
「「「「!!」」」」
四人は初めて見たクラウドの笑顔に目を見開き、唖然と立ち竦んだ四人に背を向けたクラウドは市丸と共に姿を消す。
「…ごめんなぁ、クラウドちゃん。」
『…何故貴方が謝るのです』
「…ごめんなぁ」
『…』
珍しく眉を寄せてそう言った市丸を見上げたクラウドは前を向き、一度も足取りを乱す事無く地下へと歩を進めた。