破面騎士

□現世と流魂街
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『…っ』

「ククク…虚閃以外ハ使エナイヨウダナ…」



 不気味に笑う虚を見上げ、クラウドは口内に溜まった血液を吐き出した。
 そのまま口元を拭い、さりげなく周りの民家に目を移す。



「ヨソ見ヲシテドウスル」

『っ!ぐ…っ』



 即座に腕をクロスさせて防御したクラウドだったが、勢いは止めきれず背後に吹き飛んだ。



『…』

「死ネエエェェエ!」

『…っ』



 三匹同時にクラウドに向かって飛び跳ねた。
 それを見上げたクラウドは腕の力をだらりと抜き、ため息をついて三匹を見上げる。



 仕方がない。この体が壊れた後は出られるが…死神と戦うしかないか。………面倒な…



 一人納得し、ぼーっと虚を見上げていたクラウドは虚の背後に現れた霊圧に目を見開いた。



「そこであきらめたら終わりやで、お嬢ちゃん。」

「ったくよぉ…どいつもこいつも!」

『…!?』



 虚達の間に見えたのは、二人の死神。どちらも白い羽織を着た巨大な霊圧を持つ死神だった。
 一人は金色の髪の長髪、もう一人は銀髪で短髪の男で、恐らく隊長達だろう。



「ナ…、ンダト」



 虚達が悲鳴を上げる暇も無く、その死神達は三匹を一刀両断してその場を収めた。



「遂には此処でも出て来たなぁ…虚」

「めんどくせえ…」

『…』

「あ、大丈夫やった?」

「ったく…ほらよ」



 金髪の男は笑顔でクラウドに話し掛け、銀髪の男は面倒くさ気に手を差し伸べる。
 それに捕まって立ち上がったクラウドは目の前に立つ死神を見上げた。



「変わった髪の色してるんやね。」



 クラウドの髪を見ながら言った金髪の男は相変わらずの笑顔でニコニコと話している。



『…何者だ?』

「あ?それが恩人に対する言葉かよ」

『…』



 数秒間睨みあった二人を止める様に金髪は間に入り込むと、クラウドに向き合って口を開いた。



「俺は平子真子ゆうねん。まあ死神の隊長や。」

「…六車拳西。同じく隊長だ。」

『…クラウド、オーデルシュヴァンク』



 警戒しながら名を名乗ったクラウドは、背後に立った霊圧に反応して振り返る。



「隊長!此方に居らしたのですか」



 背後には、二人の部下だと思われる三人の死神が立っている。
 それを見た金髪の男はあー、ごめん。と手を振り、口を開いた。



「すまんすまん、こっちに虚の気配がしたもんやから。」

『…』



 正体がバレると厄介だと判断したクラウドは気配を消し、口を閉じる。



「そちらは?」

『…っ』

「…!おい。あっちに虚の気配がする。」

「……ああ、ホンマやなあ!あっちに虚がおるわー。」



 六車の言葉に合わせる様にそう言った平子は三人の部下を急かした。
 が、それとは裏腹にクラウドは首を傾げている。



『は…?』


 何処にも虚の気配などしないが…


「な、本当ですか隊長!」

「俺が言ってんだ。当たり前だろうが。」

「俺等はこの子送るから頼むわ。」

「はっ!」



 そう返し、部下達は瞬歩でその場を去った。
 それを見送った二人は振り向き、クラウドに声をかけて歩き出す。



『…』

「…君、虚やろ。」

『!』

「わりぃな。さっきの虚閃見させてもらったぜ」

『…』



 クラウドはすぐさま距離を取り、構えた。
 それを見た平子は戻っといで、と優しく声を掛けると、六車と共に両手を挙げた。



「大丈夫や。この通り何もせぇへん。悪い子やなさそうやしな。…ほら、行き」

『な…』

「はよ行かな死神がまた来るで?」

「…じゃあな」



 そうとだけ伝え、二人はゆっくりと歩き出した。
 それを唖然と見ていたクラウドは微かに匂う藍染の匂いに平子を見る。



『…バカな死神だ…』


 …本当に…


『おい真子!』

「?早速呼び捨てかいな。」

『藍染に気をつけろ』

「!」

『お前の後ろにいるのは…誰だ』

「…」

「平子…?」

『お前の隣についている奴は本物か?』

「…ありがとうな。まあせいぜい気ぃ付けるわ。」

「…」

『…』



 手をヒラヒラと振る平子と拳を挙げた六車を見送り、クラウドは再び更木に向かって歩き出した。




 (…にしても美人な子やったなぁ)
 (人間離れしすぎだろ、あの容姿。つかお前アイツ虚だぞ)
 (いやー、いきなり確信突かれてちょっとビビったわ)


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