破面騎士

□現世と流魂街
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「…は…っ」



 腹部の痛みに顔を歪ませている一護の母親は苦しげに体をくの時に曲げて震えている。



『…お前、このままだと死ぬぞ』

「…死…?」



 かろうじて意識を持っていた彼女に話しかけたクラウドはコクリと頷き、即死ではなかった事に安堵のため息を吐いた。



『…死にたく、ないか?』

「そう…ね…まだあの子達が…居る…か…ら…」

『…お前が死ねば、一護は一人になるのか?』

「…そう、ね…。あの子達を…あの人、を一人に…」

『…』


「母さん!!」

「…!」

「お母さん…!?」

「母さ…っ!」

「あ…っ、お姉さん!か…母さん…は…」



 一護の言葉に彼女から目を離した3人はクラウドに目を移した。



「…!お前…!?」

『!』



 死神か…?とクラウドは眉を寄せ、目の前に立つ巨大な霊圧に目を見開いた。
 それは相手も同様らしく、クラウドを唖然と見つめている。



「なんで…」

「あ…な……た」

「っ!」



 一心は少し口を開いたが、彼女の声に血相を変えてこちらに駆け寄った。



『…助けたいか?』

「…なに?」

『生きていてほしいか』


「うん!」

「あんた…母さんを助けられるの!?」

「やめ…」

「お願い!母さんを助けて!」



 お前等…、と口籠る一心を見、クラウドは小さく頷いた。



『…分かった。』

「何を…」

『…少し、静かにしていろ』

「!?」



 一心は突然雰囲気が変わったクラウドに驚いて目を見開き、感じていた霊圧とは桁違いの霊圧を感じ、背後を振り返った。
 背後では霊圧に耐え切れなくなった子供三人が地面に倒れている。
 クラウドはそれを見ると、口を開いた。



『彼女はお前の大切な人であり…、あいつ等の母親だろう。ここで殺してはならない気がするんだ』

「…お前…」

『…完全再生』



 そう静かに呟き、真咲の体が淡い光に包まれた。
 それを眺めるクラウドは一心に目を移さず子供を起こせ、と伝えた。



『……傷は塞いだ。これで命に別状はないはずだ』



 そう言って一護の母親を揺すったクラウドは一心を振り返る。



「…っ」


「母さん…!」

「あなた…?」

「母さん!」

「お母さん…!」

「よかった…っ」

「遊子、夏梨…」


『…この雨の中、お前は雨で足を滑らせて気を失った』

「!」

『お前達三人はそれを見て気を失った。それだけだ』

「……ありがとう」



 クラウドは無表情でそう伝え、呆然とこちらを見つめている一心と目を合わせた。



『…』

「よかった…っ」

「もう…泣かないの。」



 と真咲がなだめるも泣き続ける三人を見下し、クラウドは静かに一心の元へ歩き出す。



『…』

「…ちょっと来てくれねーか」



 クラウドにのみ聞こえるように静かに発せられた言葉。
 分かっている、と返したクラウドは一心の後を静かに歩いた。



「…ありがとうな。」

『…死神に礼を言われる筋合いはないはずだが?』

「気づいてやがったか、虚」

『やはり貴様も気づいていたか。』

「まあな。…ありがとうな。」

『だから礼は…』

「一護を…、あいつを護ってくれて」

『…遠い未来、お前とまた会うことになるだろう。』

「…」


『その時には、あの小僧も私の事など忘れているだろう。…その時は、敵だ』

「…そうかもしれねえな…」

『…さて。邪魔者は消えるとしよう』

「…助かった。」

『…』



 一心の言葉を無視して歩き出したクラウドは空を見上げ、元来た道路の方向へ向かう。



「おねえさん!ありがとー!」



 その言葉が聞こえたと同時に背中に軽い衝撃。
 振り向いたクラウドは下を見下し、目を細めた。



『…一護』



 腰にへばりついた笑顔の一護を見、頬を緩ませたクラウドは何だ?と腰を屈めて一護を見る。



「うん、あのね…」

『…ああ、そうだった』

「…おねえさん…?」



 クラウドは静かに一護の頭に手をのせ、ゆっくりと顔を近づけていく。



「っ…」



 お互いの顔が目と鼻の先にあるほど近づいたクラウドは静かに口を開き、言葉を紡いだ。



『―――――…』

「え…」



 一護にしか聞こえないような音量で何かを囁いたクラウドはその後、一度も振り向かずに去って行った。




 (大切なものを護れ。―――そして、その為に゙力゙を手に入れろ)

 (…なんでだろう。あの人とさっきの女の子が)
 (同じ存在に思えてしまった)


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