本という名の欲望

□季節外れの花
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ねぇ、貴方は知ってる?



季節外れに咲いた一輪の花のことを。



そう言ってもよくわからないよね、じゃあこう例えることにするよ。








友達ばかりの空間に独りぼっちの少年。


みんなが楽しそうにするなか、彼だけは寂しく俯いていた。




少年は悲しんだ。



少年は寂しく思った。




少年は妬ましく思った。



そんな気持ちが混ざりあい、彼の心はパンクしてしまった。
絶望に心を委ねて、廃人と成り果てた。





今は心の病と病魔に苦しみながら生きている。



僕はそんな少年を『彼岸花』に例えいた、花言葉は悲しい思い出。
彼には悲しい思い出ばかりなのかもしれないからだ。失礼だとは思うけど、僕にはそう思えたから。




だから、彼の側にいる。




少年の思い出に喜びを与えるために、命を終えたときに少年が後悔しながら逝くのを見たくないから。

そして、一番の理由は彼の笑顔を一度でもいいから見てみたいから。




吸血鬼だろうと、人と変わりはないから。だから、少年と一緒にいる。



「今日も行ってくるよ。」
「またですか〜?」
「僕が行ったらまずいの?」
「そうじゃねぇけど……人間なんかの側にいて楽しいんですか?」
「楽しいかどうかは置いておいて、僕は彼のことほっとけないし。
友達と一緒にいたいって思っちゃダメなの?」
「わかったわかった!!これ以上言わない!!!!
ったく、頑固なところは当主そっくりだ。」
「ありがとう、夕食には帰るから。」
「行ってらっしゃい、『キオ』様。」
「うん。」





今日も僕はあの子に会いに、病院まで行く。少年の部屋まで徒歩で行く。



深呼吸をして、ドアを開く。





「やあ、機嫌はどう?」





そこには虚ろな目をした彼がベットから上半身を起こしていた。

絶望に満ちた目が僕を見つめる。



「絵を描いていたの?」
「…………………。」



少年の唇は動かない、それから首を振った。
今日も彼の目は俯いていた。
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