小さな本の野望

□ふたりぼっち
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そんな何時もと変わらない生活をしていたある日のこと。








山の中に人間の少年が倒れていた。



少年は怪我をしていた、あちこちアザがあったりした。おまけに熱もある。




「人間だけど怪我してるし、具合悪そうだからよくなるまで面倒みよう。」




グレンは少年をおんぶして自分の家まで運ぶ。


布団のかわりに動物の毛皮で作った毛布で彼を寝かせた。


薬草を使った手当てもした。









「………君は何処から来たの?どうしてオレの住む山に入ったの?」

眠っている少年にグレンはそう問う。


茶色の髪を優しく撫でようとしたが、すぐに手を引っ込めた。

「オレなんかに触られたら嫌だよね、そんなこと言っといて手当てで身体触っちゃったけど。」



彼は頬杖を付きながら少年を眺める。




「早く起きないかな。」









それから1週間、グレンは少年を付きっきり看病した。


「…………?」
「目が覚めたんだね。」


漸く少年が目を覚まし、起き上がった。


「あの、此処は?」
「昔は名前あったんだけどね、此処は山とだけは言っておくよ。」

少年は彼を見る、頭に角があり瞳は左右違う色をしていたからかまじまじと眺めた。


「…オレは鬼、本当だったら君を追い出してるけど怪我してたから。」
「は、はぁ。」
「ちゃんと歩けるようになったら帰してあげるから安心して。」


グレンの言葉に少年は思い詰めた顔をする。



「どうしたの?」
「帰してくれるのは有り難いんだけど、ボクには帰るべき場所が無いんだ。」
「?」
「ボクは両親がいないし、ボクを引き取ろうなんて人はいないから。」



少年は俯いた。



グレンには彼が言ったことを理解できなかった。



「君はどうして両親がいないの?」
「2人とも死んだ、住んでたところも追い出された。
みんなと違うから。」


“だって、目の色違うだろ?”



よく見てみると少年の瞳はサファイアのような青いものとエメラルドのような緑のものがあった。



「でも、君の瞳は綺麗な色してるよ。」
「そう言ってくれたのは両親だけ、他のみんなは気味悪がってる。」



少年は記憶を思い出すようにフッと笑った。


「どうして笑うの?誰かを恨んでないの?」
「恨んでなんかないよ、恨んだら誰かを好きになれないから。
いつか、そんな自分を受け入れてくれる人がいると思ってるから。」




グレンは彼の言葉に胸がチクチク痛む。


自分はどうなのだろうか。


彼と違って自分は色んな者達が信じられなくなった。



自分や周りのもの、全てを恨んだ。



「……………君は優しいんだね、オレなんかより。」
「ボクは人より何倍もひねくれてると思うけど。」
「だって、オレは人間も仲間も自分も嫌いなんだ。」



乾いた笑みを浮かべるグレンを、暫く少年はただ悲しそうに見つめていた。
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