小さな本の野望

□ふたりぼっち
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「今日は沢山野菜が採れたなぁ。」



頭に2つの角を持っている少年は今日も自分の庭で育てた野菜を採っていた。




この少年は『グレン』、鬼の子だ。
少年とか言っておきながらも1000年以上生きているが。


彼の住む山は誰も寄せ付けない、自然は美しいが鬼が山から人を追い出そうとしてくるので有名である。


人を追い出そうとしている鬼はグレンのことである。



「今日は人が来ないといいな、みんなオレを見ると怖がるから。」



グレンは青色の瞳と赤色の瞳を瞬きさせる。


この目のせいで前にいた集落の鬼の子達からいじめられ、大人には「不幸を呼ぶ」ということで嫌われていた。









彼は何処へ行っても独りぼっちだった。








人間からは鬼として恐れられ、同類には汚ならしいものを見る目で見られたりもした。


気がつけば、1000年も独りだった。




「あ、あの鳥子供が生まれたんだ。」


この山はグレンにとって家でもあり、心休まる場所である。


自然と共に生きてるも同然。



「風が気持ちいい…………。」


赤と黒の髪が風で揺れる、爽やかな風は通りすぎた。










そんなときだった、近くで銃声が鳴り響いた。



「……っ!もう来ないで、来ないでよ!!」




銃声の聞こえた方にグレンが駆けていくと、漁師が熊を撃っていた。

「出てけっ………、此処から出ていってくれ!!」



グレンは漁師の前へ出る。


漁師は彼を見るなり顔を青くした。







噂通りの鬼で殺気が溢れているのだから。

いくら子供の姿とはいえ、普通の子供は相手を怯ませる位の殺気は持っていないからだ。



「ひいっ!!ば、化け物が!!!!」

持っていた銃を構えるが怯んで動けない、グレンはその隙に素手で相手の胸を貫いた。


「や、やめ………。」
「オレの山で煩いことしたんだからその罰。

償うなら今からオレに喰われればいいんだ。」






グレンが山から人を追い出したりする理由、それは自分を寄せ付けないため。


自分は鬼だから人とわかりあえない、みんなと違うから同類ともわかりあえないと思っている。





「…………オレは穢れちゃったな、血で汚れて心も汚い。

見た目も醜いから誰かと友達になっちゃいけないんだ。」


散々疎まれ、悪口を言われ、突き放されて、彼は何もかもに絶望していた。



自分の存在でさえも。









「ねえ、オレはどうして生まれたの?

『友達』って何なの?

『ありがとう』って何なの?



…………わからない、わからないよ………………。」
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