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□擬人化シリーズ:春と冬
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ガチャリ、と鍵を開けて自分の部屋に帰る。
…あれ?明かりつけっぱだったか?
うわ、もったいない!
慌ててリビングのドアを開けると―

「遅ーいっ!!」
「………は?」

そこには怒りマックスの女王様…もとい。

「フユ…?」

…え?
あれ?
な…何でフユがここに?
いや、僕の部屋の鍵は持ってるけど、でも、あれ??

「…ちょっと、もしかしてメール見てないの?」
「…メー、ル?」

慌ててスマホを取り出す。
…ヤバい。
メールも着信も来てます…フユから。

「ご…ごめん」

そろーっとフユを見ると…機嫌悪さマックスですよ、女王様…。

「あのさぁ…恋人のメールも電話も無視って有り得なくない?」

ズキ、と胸が痛みを訴える。
恋人、って…なに?
僕はフユの恋人なワケ?

「まぁバイトだからしょうがな…」
「…なの?」
「は?」

怖い。
怖いけど、はっきりさせよう。
僕は拳をぎゅっと握り締める。

「僕はさ、フユの恋人なの?」
「は?今更何…」
「だって、ここんとこフユおかしかったろ?僕を避けたりアキと何かしてたり…。もしかしてさ、僕じゃなくて他に好きな人でも、出来た?」

アキとかさ、という言葉は飲み込む。
そうだよ、もう終わりにしよう。

「僕なんかより―」
「っ、バカじゃねぇの!?」

フユの怒声が僕を叩く。
けれど、そこに怒り以外が含まれてて、僕はフユを見つめた。

「…っ、何時、いつ俺がそんな事言った!?」
「フユ…」

顔を真っ赤にして、震えてるフユ。
その震えは怒りか、それともそれ以外か。

「何一人でっ、か、勝手に先走ってんだよっ!大体お前っ、今日何の日か覚えてっかよっ!」

…え?
今日?
今日…ええと…

…駄目だ、思い出せない。

「…はぁ。やっぱり忘れてやがる。お前、自分の誕生日くらい覚えてろよ!」

あれ?
…あ、そう言えば。

「…あー、そうだった」

けど、それと何の関係があるんだ?

ぽかんとフユを見つめると、フユは真っ赤になって僕に小さめの箱を突き出した。

「はいこれ!」
「…え、と」

躊躇う僕にぐいっと押し付ける。

「だから!誕生日プレゼント!」
「あ…」

箱を受け取る。

「…ありがとう」
「は、早く開けろよ!」
「うん…」


箱のラッピングを剥がし、開けてみる。

「時計だ…」

それは前から僕が欲しいと思ってたシリーズの腕時計。

「これ…」
「ハ、ハルが欲しがってたヤツだろ、それ」
「…うん」
「ちょっと探したんだけど、なかなか無くてさ、アキに頼んで探してもらったんだ」

…だからアキとこそこそしてたのか。

「アキに『フユはすぐ顔に出るからサプライズにしたかったら気をつけな』って言われてさ、ちょっとハルと顔合わせないようにしてた」

…そういうことだったのか。

「…そしたらユキにハルがおかしいって言われるし、メールしても電話してもなかなか出ないし、挙げ句の果てににはお前、変な事言い出すし…っ」

声に震えと水分が含まれてて、僕は慌てる。

「ご、ごめん」

フユをぎゅっと抱きしめる。

「ごめん、フユ。フユの様子が変でも僕がおかしかったら駄目だよね…僕がしっかりしてないと、フユの恋人で居られなくなっちゃうな」

途端にフユが僕の胸に手をついて、少し離れる。

「…っ、も…いい加減にしろよ!今回は俺も…わ、悪かったんだし、それに…」

少し躊躇った後、フユは上目づかいで僕を見上げる。

「俺…お前じゃないと、やだし…っ」
「…っ、フユ!」

僕はフユをぎゅっとまた抱きしめる。

男の癖に冷え症のフユの身体は、触ってても抱いてても気持ちがいい。
でも、そんな事抜きにして。

「…フユ、大好きだよ」

ちゅっ、と啄むキスをする。

「バカ…、そんなん知ってる…っ」
「うん、うん」
「お、俺だってハルのこと…好きだ…っ」
「…うん」

お互い引き寄せられるかのように、キスをする。

薄く開いた唇に舌を差し込めば、積極的に絡めてくる。

「ン、ぁ…ふ…」

フユの甘い声が漏れる。
僕はフユの唇を食み、歯裏をなぞり、舌を吸う。

「ンふ…、ぁ…ぅんっ…」

フユの口の端から唾液が零れる。
それでもお互い構わず貪る。

「…っ、んは…っ、ぁ…」

やっと口を離す。

お互いの口を銀色の糸が繋がる。
名残惜しそうに、ゆっくり切れていった。

「…ねぇフユ、しよっか?」
「…ン、する…」

トロンとした目で僕を見上げる女王様は、僕の愛しい可愛い恋人だ。

ゆっくりと2人、ベッドに倒れ込んだ。




後戲も済んで、2人ベッドでまったり横になる。
フユが僕の身体にぴったりくっつく。

「フユ?」
「…ハル、暖かくて、気持ちいー…。だから…ってワケじゃないけど…ハルがいい。ハルにずっと、暖めてて欲しい…」

そう言えば、冷え症のフユに対して僕はやたらと体温が高い。だからフユはよくくっついてきてた。

「身体の相性も抜群、てこと?」
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