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□こんな恋のはじまり
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思わず大きな声を出したけど、幸か不幸かBGMに飲み込まれて誰も気づかない。

「ほーんと、可愛い」

お兄さんの声にハッとし、気が付くとジーンズの前は寛がれていた。
そのままスルリとボクサーパンツの中に手が入る。

「ゃあ…っ!」

お兄さんの手は、僕のモノを確かめるようにゆっくり撫であげる。

「ホラ、もう先っぽヌルヌルだよ。パンツ塗れちゃうね」

お兄さんの指が、亀頭をクリクリと撫でる。

「…ゃ、ゃぁあ…っ」

いつの間にか、僕はお兄さんの方に引き寄せられて、右腕は僕の身体とお兄さんに挟まれて動けない。
左手はお兄さんに掴まれてて、触られ放題だ。

お兄さんは親指と人差し指で僕の亀頭を擦り、僕の先端は先走りを零していた。

「ああ、パンツが濡れてきちゃったね…気持ちいい証拠だよね?」
「ぁ、やめ…っ」

スクリーンからはゾンビの呻き声や主人公の叫び声が大音量で流れてるはずなのに、全然耳に入ってこない。


僕はこの状況に流されまくってる。
お兄さんを蹴りつけるなり、身体を捩って抵抗するなり、いくらでも方法はあるはずなのに。
出来ない。

「ゃ、ゃめ…、止めて…っ」

口ではかろうじてそう言うものの、身体は一切抵抗出来なくて。

「何でぇ?こんなに気持ちよさそうなのに」

楽しそうに言うお兄さんの声が、言葉が余計に僕を高ぶらせる。

いつの間にか僕のペニスをパンツから出し、卑猥に弄る様子が丸見えだ。

「…は、ぁ…、も、う…出る…ぅ…っ」

自慢じゃないけど、彼女居ない歴=年齢の僕。…勿論童貞。
だから自分でしか抜いた事が無いのに、この刺激。
はっきり言ってもう我慢出来ない。
見知らぬ変態お兄さんに抜かれてイくなんて、人生最大の汚点かもしれないけど、もう無理。

と思ったら。

お兄さんは急に手を離した。

え…と思う間もなくお兄さんは上半身を屈めて僕の股間に顔を埋め―

「は…うわっ!?」

爆発寸前の僕の分身をぱくりとくわえた。

お兄さんの舌が亀頭をぐりぐりと舐め、手で扱く。

「は…、ゃぁ…だ、め…っ」

快感に頭がクラクラする。
射出感を堪えようとぎゅっと拳を握り締める。
けれど、雁首をなぞられ鈴口に吸い付かれ、手で扱かれたらもう抑えることなんか出来なくて。

「ぁ…っ、も…、出る、イく…っ!」

…僕は不可抗力ながら、見知らぬ変態お兄さんの口の中に射精してしまった。

「あ…、は…ぁ…」

まだ僕の分身がビクビクと震えながら射出してる。
その青臭い精液をお兄さんがゴクン、と飲み込んだ。

「あ…」

射精感にぼんやりしながらも、お兄さんが僕の精液を飲んじゃったとんでもない事実に羞恥がゆるゆる上ってくる。

「ごちそうさま」

顔を上げてニヤリと笑う変態お兄さん。
…初めてきちんと顔を見た。

暗いからよくは判らないけど、少し長めの髪をワックスで無造作に流し、目は二重なのにスッと涼しげな印象で、薄い唇をさっきまで僕のモノを舐めてた舌でペロリと舐める様子はすごくエッチな感じだ。

耳にはピアス、指にはシルバーリングとアクセサリーをカッコ良くつけて、V字の黒っぽいカットソーから鎖骨が見える。
…つまり、お洒落なイケメンだってことだ。

「君があんまり可愛いからつい襲っちゃった」
「な……」

お兄さんは僕の頬にチュッと音をさせてキスをする。

「じゃあね」

変態お兄さんはまだエンドロールにもなってないのに、席を立って出て行った。

僕は今されたことに頭と身体がついていかなくて、映画が終わって場内に明かりが点くまで呆けてた。
明かりが点いてようやく我に返る。
パンツは勿論、ベルトまできちんと締められていて、見た目には何事も無かったようになっている。
けれど。
僕は人生初めて痴漢されて、その場所が電車とかじゃなくて僕の大好きな映画館だったことは紛れもない事実なんだ。

ショックだ…。
お兄さんに痴漢されたことも、それでイっちゃったことも、ショックだ。

…うー、僕ってそんなに無防備?

僕はふらふらと席を立って、映画館を出る。

…結局後半を全然見られなかったな。
いくらB級とは言え、お金払って見てるんだから勿体無いことした。
…っていうか、あの変態お兄さんにお金返して欲しいくらいだよ!
今度会ったら絶対映画の料金請求してやる!

…今度?

そこまで考えて僕はハッとする。

今度ってなんだ?
また会うかもしれないって考えてるの?
普通は痴漢された相手になんかもう会いたくもないんじゃないの?
なのに…
僕、何考えてんだろ…?

家に着くまでの間、説明のつかない思考に頭を悩ませてた。
もちろん、結論なんか出やしなかった。




数日後。
少しずつ「痴漢された」という事実が記憶の向こうに行きかけてきていた。

実は兄貴に痴漢に遭った事を話したんだけど、兄貴曰く
「男同士でヌきあうことなんてよくあることだから、大したことナイ」
だそうで。
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