Second

□虎と兎のはじまり 〜TIGER&BUNNY〜
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「なぁバニー、お前酔ってる…よな?」
「酔ってませんよ、虎徹さん」


僕はにこりと笑うと、ソファに座ったままうろたえる虎徹さんに覆い被さる。

「ちょっ…、待て待て待て!」
「もうこれ以上待てませんよ」


顎を掬い、唇を奪う。

「んむっ…、っ…、は…っ」

最初は固まってたけど、舌で虎徹さんの口内を蹂躙すると次第に力が抜けてくる。

「ン…、ふ…ぁ、バニー…」

チュッ、クチュッ、と水音をさせてキスを続けるうちに、虎徹さんの瞳がとろんとしてくる。
…相変わらず可愛い人だな。
僕は舌を虎徹さんの舌に絡ませた。





最初は、「何だこのおじさん」っていう認識しかなかった。

やたらと「ヒーローとは」なんて煩いし、スマートじゃないし、お節介だし、そのくせ空回りばかりだし。

…だけど。

僕の過去―両親が殺され、その犯人をずっと追ってヒーローになった―そんな過去を知った時。
犯人が判らずにムチャクチャに追っていた時。

虎徹さんはずっと僕の事を心配してくれていた。
…僕が独りでいいと拒否していたのに。

ルナティックの攻撃から僕を庇ってくれた時、怪我してるのにもかかわらず、僕のメンタルを気にかけてくれた。

「ルナティックが犯人じゃなくて、良かったな。…いや、良くねぇか」


その時初めて感じたんだ。
胸の、疼きを。

虎徹さんが落とした襷の燃え残りを持ち帰ったのは、その胸の疼きが騙せなかったから。

それから焦らなくてもいいと思えたのは、虎徹さんが側にいてくれたから。

ジェイクとの戦いの時、やっぱり焦って追い詰められた僕を助けてくれたのは、虎徹さん。
怪我を押してまでジェイクの能力と、起死回生の一手を教えてくれた。
…まぁ、相変わらずスマートじゃなかったけど。

やっと自分の中で区切りがつけられた。
その時初めて素直になれた。
「虎徹さん」って呼べるように、なれた。

それからだ。
僕の中で、どんどん想いが加速していった。

平気でボディタッチをするファイヤーエンブレムが羨ましかった。
「親友」の位置に居て、虎徹さんを呼び捨てにしてるロックバイソンに嫉妬した。
ツンツンしてるくせに、明らかに虎徹さんに恋心を寄せてるブルーローズに苛ついた。
頭を撫でられてるドラゴンキッドに替わりたかった。
心配してもらってる折り紙サイクロンに、虎徹さんに甘えるなって言いたくなった。
…スカイハイみたいに、単純になりたかった。
単純になって、純粋に虎徹さんに気持ちを伝えられたら。
そう、思った。


苦しくて、辛くて、でもどうしようもなくて。

そんな僕を、また心配する虎徹さん。

「どうしたバニー、何かあったら俺に言えって言っただろ」

…言えるわけないでしょう。
あなたが好き、なんて。

誤魔化し、強がり、避けた僕に。
無茶して風邪をひいて、倒れた僕に。

「…どんな事でも受け止めてやるから、話せよ」

熱で思考がうまく働かなかった。
感情ばかりが先立った。

「…っ、僕は…っ!あなたの事が好きなんですよ!」
「…は?えっと…バニー?」

涙で濡れた瞳で睨みつける。

「あなたに!恋愛感情を抱いてるんですよ!欲情してるんです!」

見開いた目で僕を見る、茶色の瞳。

「あなたに触れたいし、キスだってしたい!そういう好きなんですよ…!」
「バニー…」

半ば叫ぶように言い、俯く。
虎徹さんが見られない。
どんな表情してるのか、怖くて見られない。

「…すみません、言うつもり無かったんです」

壊れたものは、元に戻らない。
自業自得だ。
ぽた、と涙が落ちる。

「…気持ち悪いですよね、コンビも解消しましょう」

そう言った途端、僕は虎徹さんの腕の中にいた。

「…っ!?」
「勝手に独りで決めてんじゃねーよ、バニー」

耳元で響く、虎徹さんの声。

「気持ち悪いって何だ、誰がンなこと言った?」
「…ぁ、だって…」

震える僕の肩を掴み、射抜くような眼差しで僕を見る。

「そりゃ…俺だってびっくりしてる。全然思いもしなかったからな」

…そうですよね、超が付くくらい鈍いですから。

「けどな、俺はお前を否定なんかしねえぞ」
「虎徹さん…」
「今すぐ返事は出来ねえけど、謝ったりコンビ解消とかはナシだ、いいな!」

そう、言ってくれた。



それから色々あって、黒幕がマーべリックだと判って…虎徹さんが倒れて。

もう…これっきりかと思ったけれど、虎徹さんが大丈夫だった時は思わず虎徹さんを抱きしめた。
その時も僕を受け入れてくれた。

虎徹さんと共にヒーローを辞めたけど…その後僕の部屋に来てくれた。

「…俺な、お前らが…お前が俺の事を忘れた時、すげぇショックだったんだ」
「す、すみません…」
「いやいや、あればバニーのせいじゃねえだろ。…で、逃げながら考えた。このショックは何なんだ、って」

虎徹さんは正面から僕をしっかり見てくれる。
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