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□ハロウィンパニック!
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Trick or treat!

お菓子をくれなきゃ、イタズラするぞ!

さあ、どんなイタズラを…されちゃう?




「ハロウィンパーティー?」
「うん」

いつものようにBLUE noteでのんびりコーヒーを飲んでいたら、佑壱さんがにこにこしながらやってきた。

「ハロウィンて、お菓子をくれなきゃ悪戯するぞーっていう、あの…?」
「そうそう、そのハロウィン」

その、も何も他に意味の違うハロウィンなんか無いだろう…と思うけど。

「ウチもね、一応商店街に加盟してるからそういうイベントには乗らないとね」
「はぁ、そういうもんなんですか」

…そんなの関係無く佑壱さんはイベント事が好きそうだ、とは言えずに僕は黙ってコーヒーを啜る。

「でね、ウチは店員にハロウィンコスさせて仕事させるんだけど、お客さんにお菓子を配る人が必要なんだよね」
「え…」

何となく、この後の展開が読めるんだけど…。

「バイト代出すからさぁ、柾行くんやってくれない?」
「ええと…うーん」

別にバイト自体は嫌じゃないし、BLUE noteの人たちとは全員顔見知りだから平気だし。
でもなぁ…と悩む僕に、佑壱さんの悪魔の囁き。

「…孝志くんのコスプレ、吸血鬼なんだよね」


タ…タッくんの吸血鬼コス…!!

「や、やりますっ!!」

何ですかそのドはまりなチョイスは!!
そんなタッくん絶対カッコいいに決まってるー!!



…ということで、佑壱さんにまんまと乗せられた僕はハロウィンのバイトをすることになった…んだけど。


「ハァ!?柾行が?」
「う、うん…」

学校の帰り、タッくんと一緒に歩きながらバイトをすることを言ったら、タッくんの目が鋭くなった。

「あンっのクソ店長…何考えてんだ!」

ひぃぃ!タッくんが久しぶりに怒ってるぅぅ!

「で、でも佑壱さん助かるって言うし…」
「あのオッサンがやりゃいいんだよ」

うー…何で怒ってるのか判んないけど、今からバイトを辞めるわけにもいかないし…それに。
僕はタッくんの袖をきゅっと掴む。

「でも僕…」
「あ?」

タッくんを見上げる。

「僕、タッくんと一緒にバイト…してみたい、から…」

だめかな?と首をこてっと傾けて聞いてみる。

「…っ!?」

あれ…?タッくんの顔がみるみる赤くなるけど…な、何で?

「た、タッくん?」
「クソッ、反則だ…っ」

タッくんは急に僕の手首を掴むと、雑居ビルとビルの間へ入っていく。
通りからもビルからも、死角な場所まで僕をぐいぐい引っ張っていく。

「タッくん、どうし…っ!?」

立ち止まったと思ったら、タッくんに抱き締められる。

「…っ、柾行、何でそんなに可愛いんだよ…っ」
「へっ!?な、なななっ!!」

僕は全然可愛くなんかないし、そもそも男だから!
それに可愛いって言われても嬉しく…う、嬉しい…。
タッくんに可愛いって言われて嬉しい僕がいる。
ドキドキして、胸がきゅうっと締めつけられる。

ちら、とタッくんを見上げると。

「柾行…」
「あ…」

ちゅ、と重なる唇。慌ててぎゅっと目を瞑る。
すぐ離れるけど、またチュ、チュと啄むように繰り返すキス。

「は…」

僕が呼吸のために薄く口を開けたら、するりとタッくんの舌が入り込んでくる。

「は…、ぁ…っ」

ちゅ、くちゅ、と音がして恥ずかしいとか、通りから死角とは言え外だとか、そんな事を考える余裕もなく、タッくんに口中を蹂躙される。
タッくんの舌が僕の舌を擦り、絡まり、吸われる。
熱い舌に、時々唇を甘噛みされる感触に、いつものように頭が痺れてくる。


やっと唇が離れていくけど、僕の口とタッくんの口を繋ぐかのように唾液の糸がひいている。
僕はまともにタッくんの顔が見られなくて、タッくんの胸に顔をぽすんと埋める。

「柾行が可愛すぎて我慢できなかった」

僕を優しく抱きしめながらそう言うタッくんに、もう僕はドキドキしっぱなしなんだ。

「も、もう…」

せめてもの恥ずかしいんだよ!って言う意思表示として、顔は俯いたままタッくんの胸を両手の拳でぽすぽす叩く。

「そんなん痛くも痒くもねーっつうの」

笑いを含んだ声でタッくんが僕の頭にちゅっとキスを落とす。

「〜〜〜っ!!」

もう、タッくん格好良すぎてズルい!





ハロウィン当日。

BLUE noteに行くと、ハロウィンらしく店内をお洒落に飾ってあった。

「いらっしゃい」
「あ、こんにち…は…」

にこにこと微笑む海賊…もとい。

「ゆ…佑壱さんっ!?」
「どう?似合う?」

どこで揃えたのか、膝上まである長いブーツに黒いパンツ、ベルト代わりにスカーフのような布をウエストに巻き、白いブラウスにロングコートを羽織っている。
頭をバンダナでぐるっと巻き、左目には黒い眼帯。
腰には玩具…には見えないサーベルを付けて、細部まで凝ってる。

「うわぁ、カッコいいです!」
「ふふ、ありがと」
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