甘い鳥籠
□微笑みの時間
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「レイムさ〜ん?」
どこかぬけた声がレイムの部屋に響いた。
「なんだ?ザクス。入っていいぞ。」
そうレイムが言ったよりも、ややフライング気味にザクスは部屋に入った。
ザクスはきれいな銀髪をたなびかせながら、レイムの方に歩み寄り
「ま〜た書類仕事に追われているんですカ?ほ〜んとレイムさんって人がいいですよネェ。他の人の分までやっちゃって。」
と明るい口調で言った。
このどうしようもない友人は、隙あらば仕事をさぼろうとする、レイムとは対照的な奴である。
レイムは渋面になり
「お前の分もあるんだ!!少しは手伝え!」
とザクスに怒鳴った。
まあ、怒鳴ったわりに表情は優しかったのだが。
そんなレイムの発言を、ザクスはどこ吹く風というように受け流してたずねた。
「レイムさん。いつになったら私と遊んでくれますカ?仕事なんてもう終わりにしましょうよ。」
レイムもそうしたいところだが、そうもいかないのが仕事なのである。
「もう少し待て。あと10分で終わらせる。」
その答えにザクスは満足……とまではいかないが、承知したようで私のベッドに無断で寝転がり、飴をなめはじめてしまった。
彼のきれいな紅い隻眼は、私に早くしろと訴えかけている。
まったく。あれほど”寝ながらあめを食べるな”と言ったのに。
レイムはそう思いながらも、口には出さずに黙々と書類を整理した。
レイムが仕事を終わらせ、ザクスに近寄ると彼は寝息をたてて寝ていた。
この友人が私以外の人には滅多に見せることのない寝顔。
普段はだらっとした服で隠しているが、今のようなラフな格好だと、華奢な体つきや真っ白な肌が目立って、とてもパンドラ最強には見えなかった。
剣を振り回すどころか、持ち上げることさえ出来そうにない。
まあ、本人に言うと怒られるので言わないが。
レイムはふっと口元を綻ばせた。
愛しの彼に、静かに口づけをしたあと
「おやすみ、ザクス。」
と言い、優しく微笑んだ。
ザクスはこのとき甘いお菓子の夢でもみていたのだろうか。
偶然にも、レイムと同じタイミングで、ザクスは寝ながら微笑んだ。