隠れ家

□慕情
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好きだった。
憧れだった。



憂いを帯びた横顔を見る度に胸が締めつけられたし、
はにかむ笑顔を見て胸がどくんとうるさくなった。



いつのまにか、こんなにも好きだったなんて。




ねえ、私は恋をすることが怖かったんだよ。
そういうこと、あるでしょう?

恋をするって、すごく気恥ずかしかった。自覚したくなかった。

だから、必死に
「これは恋なんかじゃない」と
気持ちを押し込めたの。


でも、止まらないんだね。
止まって欲しかったよ。




親友にも伝えていなかった。









親友は彼と付き合った。




もう、二人とも嫌いになれたらよかったのに。

でも、どちらも大切な人で。
嫌いになんてなれなくて。


親友が嬉しそうに顔を綻ばせながら話す度、私は複雑だった。

嬉しい。辛い。好き。嫌い。






もう、彼にメールなんて送ってはいけないとわかっていた。

それでも、今までより止まらなくなっている自分がいる。



親友から貰った写真。
可愛い、なんて思いながら、
ぐっと涙をこらえる。






好きだよ。




行き場のない思いは、暗く胸に淀み、沈んでいく。





彼に叫ぶ。
好きだよ。



親友に叫ぶ。
好きだよ。






ねえ、大好きなの。
ずっとずっと。







「優香っ」




好きだよ………








(周りから見れば逃げているのかも
でも私の答えはこれだった)

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