BINGO☆PLANET…冬…
□START(前編)
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12月31日ーーPM17:19
その日は日中から薄灰色の雲が空を覆う、いかにも冬らしく寒々とした天候だった。
こんな日は火燵でぬくぬくしながら、蜜柑と煎餅に熱〜い緑茶でマッタリ……が理想的なんだケド。
「っくし!」
引っ越し当日を迎えた我が身に、そんな寝言が許される筈もなく。
寒風に身を縮こませながら俺とユキ、そして見送りの母さんは駅の改札口で、列車の到着を待っていた。
外気に晒されたホームで待つよりはマシだが、やっぱり寒いもんは寒い。
寒さを紛らわす為に辺りを見渡すとーーうん、流石年末。
帰郷や旅行、年越イベントへ向かうらしい人々で、忙しなくごった返していた。
「ねえ、真人。幸枝伯母さんへのお土産は持った?」
「ん、有るよ」
俺は右手に提げた、佃煮屋の紙袋を見せる。
中身は幸枝伯母さんの好物、鯡(ニシン)の昆布巻きだ。
「じゃあ、着替えは持った?」
「有るよ」
万が一、すんなり転居先へ入れない場合を想定して、リュックに下着や私服の予備を2日分は入れてある。
「列車のチケットは?」
「有るよ」
ジーンズの尻ポケットに、俺とユキの分が入っているのを確認。
「ハンカチとティッシュは?」
「…有るよ」
ジーンズの左右のポケットへ装備済み。