たとえ君が…
□プロローグ
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ある日樽から出てきて、海賊船でともに暮らす事になった女。
泣き言も言わず、ただひたすら一生懸命に働く姿に、たちまち船員たちは虜になった。
年齢とはまるで似つかわない、幼い子供を思わせる体型。
それでも、酒場や港町にいるどんな女たちよりも魅力的に見えたのはおそらく、彼女が放つ明るく天使のような笑みのせいだろう。
暗い過去を背負った船員たちにとって、彼女の笑顔は眩しく、そして同時に温かい物でもあった。
辛かった記憶が、凍っていた心が、その笑顔だけで消えてなくなっていく。
君が誰のものになっても構わない。
できれば、自分だけのものになって、自分だけに、その輝くような笑顔を見せて欲しいものだが。
そんな小さな願いが、船員たち一人ひとりに、いつしか芽生え始めていく。
ずっとこの生活が続けばいい。
それは、彼女だけでなく、海賊船に乗る船員たちも例外ではなかった。
君がそばに居てくれさえすれば、他には何もいらない。
たとえ君が、他の何かに姿を変えようとも、その思いは決して揺らぐことない。
広い世界の中。どんなに確立が少なくとも、必ず君を見つけ出す。
大切で、決して失ってはいけない、君の事を。
そう、たとえ君が、何者であったとしても…。
必ず、君を見つけ出すから……。