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□光をもとめて
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「大変です黄瀬くん!!青峰くんがっ…」
いつもは大声を出さない彼から、こんな知らせを聞いたのはいつだったか。



とても幸せな夢を見た。なのに
目を開けた時の虚無。あぁ、彼はいないのか。夢の中にしか、いないのか。
青峰っちが事故にあった日。それは俺の誕生日、嫌な感じのする雨が降る日だった。
案の定、嫌な勘は当たった、当たってしまった。
急いで緑間っちの病院へ向かう。びしょ濡れだなぁ、まぁいっか。糸の切れた人形のように、今にも転びそうな勢いで走る。 ここ、か。
気持ちの準備なんてしてない。でもわかる、今、彼がどんな状況なのか。「…いい夢なんて、見るんじゃ無かったっスね」

「来ましたか、黄瀬君。こっちです」そこは綺麗に整備された個室だった。同じように綺麗なベッドにはシミ一つ無い。
「黄瀬…」「緑間っち…」
「…青峰君は、飲酒運転をしていた車に、ぶつかられたんです。」「こんなに…綺麗なのに?眠ってるだけみたいなのにっスか…?」その浅黒い肌には傷一つ無い。「青峰は植物状態だ。つまり…いつ目覚めるかは俺にもわからないのだよ。」
予想は、していた。だが簡単には受け入れられない。涙なんて、流す余地も無い
「もちろんできる限りの事はする。そのうち赤司達も来るだろう」「だから、諦めないでください、黄瀬くん」2人に何がわかるんだ、って言いかけてやめる。
「みんなに久しぶりに会えるっスねぇ」
限り無く無表情に近く、それでいて悲しみを滲ませた顔。あー、俺ってこんな顔出来たんだ。

例え恋人が死の淵に居ようとも、何事も無かったかのように廻る世界はなんて残酷なんだ。
仕事には出た。だけど、やりきれない感情が胸に溜まる。
結局俺は活動を、停止した。
そんな俺に声をかけた人がいた。

「黄瀬くん、僕の所へ来ませんか?」
この誘いは俺にとって救いだった。人の温かみをもう一度教えてくれた。

青峰っちが事故にあってから1年半立ったある日のこと。
「黄瀬君、病院に行きませんか」
「なんでっスか」
「自分の気持ちも理解していないんですか?」
「そんな事無い!俺は…俺は!!」
「じゃあ!君が朝目覚めた時、眠りにつく時、見たいのは僕ですか?違うでしょう!?」
「君が一緒に笑いたいのも、泣きたいのも、青峰くんとでしょう!!」
「…取り乱してすみません。ですが僕は青峰くんに言われました。『もし俺が居なくなったら黄瀬を頼む』と」
「….…合わせる顔なんて、無いんス。仕事も、恋人も、友人もほったらかして。自分が情けないんスよ」
「…青峰くんは、君を待っていますよ。」
青峰っちが…俺を…?黒子っちじゃなくて?「俺を…?」「はい」
「俺、行ってもいいの?」「はい」
目から雫が零れ落ちた。
泣きたくても泣けないんじゃなくて、内側に溜め込んでたなんて、「俺は馬鹿っスね」「…はい」
気持ちなんて、もう決まっている。

涙を拭い立ち上がる。
今はただ彼の顔が見たい。
例え顔が目を覚ましてくれなかったとしても。






俺は暗い海の底にいた。
暗い、何も無い、つまらない。
誰の声も光も届かない、退屈だ。
そもそも俺はなぜこんな場所にいる?

俺はただ走馬灯のように流れ行く自分の記憶を眺めていた。


まだバスケが好きだった頃。
黄瀬の気持ちをしりなんとなく受け入れてしまった。結果、傷つけた。

一度入った亀裂は確実に広がっていった。そして才能の開花
全中三連覇
いつのまにか消えていたテツ

俺たちは別々の道へ進んだ。
ただ隣に居なくなっただけ、喋らないだけ、触れないだけ。

それだけで気が狂いそうだなんて、
今更遅いのだろう


『俺に勝てるのは俺だけ』
黄瀬がいないなら全部同じだ。


だけど突然俺の世界に飛び込んで来た赤と水色の光。何度負かしても消えない。
そして今もまだ瞼の裏に焼き付いて消えない黄色。消えない、消せない。
掴みたい。

黄瀬に全部ぶちまけた。
帰ってきた返事は意外なものだった。

「青峰っちが…俺のトコに戻ってきてくれて、本当に良かったっス」なんて、泣きそうな顔で言われたら一溜まりも無い。
「俺も良かったよ」なんて、言ってやらねぇけど?


幸せだった。



なのに、幸せは長くは続かない。

なぜ俺はこんなトコにいる?
黄瀬?お前また泣いてんのか?
ちょっと待っとけよ。すぐ行くから…
「大変です黄瀬くん!!青峰くんがっ…」
いつもは大声を出さない彼から、こんな知らせを聞いたのはいつだったか。



とても幸せな夢を見た。なのに
目を開けた時の虚無。あぁ、彼はいないのか。夢の中にしか、いないのか。
青峰っちが事故にあった日。それは俺の誕生日、嫌な感じのする雨が降る日だった。
案の定、嫌な勘は当たった、当たってしまった。
急いで緑間っちの病院へ向かう。びしょ濡れだなぁ、まぁいっか。糸の切れた人形のように、今にも転びそうな勢いで走る。 ここ、か。
気持ちの準備なんてしてない。でもわかる、今、彼がどんな状況なのか。「…いい夢なんて、見るんじゃ無かったっスね」

「来ましたか、黄瀬君。こっちです」そこは綺麗に整備された個室だった。同じように綺麗なベッドにはシミ一つ無い。
「黄瀬…」「緑間っち…」
「…青峰君は、飲酒運転をしていた車に、ぶつかられたんです。」「こんなに…綺麗なのに?眠ってるだけみたいなのにっスか…?」その浅黒い肌には傷一つ無い。「青峰は植物状態だ。つまり…いつ目覚めるかは俺にもわからないのだよ。」
予想は、していた。だが簡単には受け入れられない。涙なんて、流す余地も無い
「もちろんできる限りの事はする。そのうち赤司達も来るだろう」「だから、諦めないでください、黄瀬くん」2人に何がわかるんだ、って言いかけてやめる。
「みんなに久しぶりに会えるっスねぇ」
限り無く無表情に近く、それでいて悲しみを滲ませた顔。あー、俺ってこんな顔出来たんだ。

例え恋人が死の淵に居ようとも、何事も無かったかのように廻る世界はなんて残酷なんだ。
仕事には出た。だけど、やりきれない感情が胸に溜まる。
結局俺は活動を、停止した。
そんな俺に声をかけた人がいた。

「黄瀬くん、僕の所へ来ませんか?」
この誘いは俺にとって救いだった。人の温かみをもう一度教えてくれた。

青峰っちが事故にあってから1年半立ったある日のこと。
「黄瀬君、病院に行きませんか」
「なんでっスか」
「自分の気持ちも理解していないんですか?」
「そんな事無い!俺は…俺は!!」
「じゃあ!君が朝目覚めた時、眠りにつく時、見たいのは僕ですか?違うでしょう!?」
「君が一緒に笑いたいのも、泣きたいのも、青峰くんとでしょう!!」
「…取り乱してすみません。ですが僕は青峰くんに言われました。『もし俺が居なくなったら黄瀬を頼む』と」
「….…合わせる顔なんて、無いんス。仕事も、恋人も、友人もほったらかして。自分が情けないんスよ」
「…青峰くんは、君を待っていますよ。」
青峰っちが…俺を…?黒子っちじゃなくて?「俺を…?」「はい」
「俺、行ってもいいの?」「はい」
目から雫が零れ落ちた。
泣きたくても泣けないんじゃなくて、内側に溜め込んでたなんて、「俺は馬鹿っスね」「…はい」
気持ちなんて、もう決まっている。

涙を拭い立ち上がる。
今はただ彼の顔が見たい。
例え顔が目を覚ましてくれなかったとしても。








俺は暗い海の底にいた。
暗い、何も無い、つまらない。
誰の声も光も届かない、退屈だ。
そもそも俺はなぜこんな場所にいる?

俺はただ走馬灯のように流れ行く自分の記憶を眺めていた。


まだバスケが好きだった頃。
黄瀬の気持ちをしりなんとなく受け入れてしまった。結果、傷つけた。

一度入った亀裂は確実に広がっていった。
そして才能の開花
全中三連覇
いつのまにか消えていたテツ

俺たちは別々の道へ進んだ。
ただ隣に居なくなっただけ、喋らないだけ、触れないだけ。

それだけで気が狂いそうだなんて、
今更遅いのだろう


『俺に勝てるのは俺だけ』
黄瀬がいないなら全部同じだ。


だけど突然俺の世界に飛び込んで来た赤と水色の光。何度負かしても消えない。
そして今もまだ瞼の裏に焼き付いて消えない黄色。消えない、消せない。
掴みたい。

黄瀬に全部ぶちまけた。
帰ってきた返事は意外なものだった。

「青峰っちが…俺のトコに戻ってきてくれて、本当に良かったっス」なんて、泣きそうな顔で言われたら一溜まりも無い。
「俺も良かったよ」なんて、言ってやらねぇけど?


幸せだった。



なのに、幸せは長くは続かない。

なぜ俺はこんなトコにいる?
黄瀬?お前また泣いてんのか?
ちょっと待っとけよ。すぐ行くから…




握っていた左手が、微かに動いたような気がした。
そして次の瞬間彼の右手が酸素マスクを剥ぎ取った。反転。
ナースコールにあと一歩届かない。
「そんなん後でいいだろ。」と彼の目が訴えかける。
あぁ、そうか。今すぐ話せるわけがなかったのだ。
「青峰っち、筆談しましょ?」
『なんで起きたんスか?』
『お前が、泣いてるような気がしたから。』
あぁ、青峰っちだ。変わらない。
『また泣いてんのか?しょうがねぇ奴。』


嬉しいのだけれど、冷静になり体制をもどす。
黒子っちや赤司っち達に連絡しなくちゃなぁ…
だけど今は…
ぼすっ
この腕の中にいたい




もう少し、このままで。




いたって、バチは当たらないさ。
なぁ、泣き虫の、黄瀬くん?

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