ドラマ『魔王』成瀬領
□再会
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成瀬は沙織の待ち合わせ場所のカフェへ向かった。
そこは沙織の友人の美穂の勧めた場所で奥に個室があり静かで落ち着いて相談できるのではと勧めてくれた場所だった。
カフェの軒下に待つ沙織の姿が見えた。
成瀬に気づかずジッと待っている。
そんな彼女を見て成瀬は以前会った頃と変わらず華奢ではあるもののあの頃と比べ随分と顔色が良くなっていた。そしてそんな彼女に対して何故か気になる思いがあるのにそれが何なのか分からないでいた。
成瀬:「立石 沙織さん・・?」
ジッと俯いていた彼女がハッと気付き顔を上げる。
沙織:「あ、はい!えっと・・成瀬さんですか?」
成瀬:「はい。申し訳ありません。随分とお待たせしてしまったみたいで・・」
沙織:「いいえ。私が早く来すぎてしまったので・・」
2人はカフェの中へと入ると奥の個室へ対面に座った。
成瀬:「(正直、彼女から連絡が来るとは正直予想はしていなかったな・・。一年振りか・・。
相変わらず華奢だがあの時よりは顔色が良くなった。)」
緊張しているのか彼女は席に座ったまま俯いている。
成瀬:「何かコーヒーでも頼みましょうか?」
沙織:「はい」
ホットコーヒーを二つ注文しテーブルにコーヒーの香りが漂う。
成瀬は彼女の近況を聞いてみる事にした。
成瀬:「沙織さんは今、大学かどこか通われているんですか?」
沙織はフルフルと首を横に振る
沙織:「いいえ。実は私・・あの家から逃げて来たんです・・」
成瀬:「あの家というと・・確か安藤さんの所に居ましたよね?」
沙織:「はい・・。去年の高校卒業の日を境に二度とあの家に戻らないって決めて・・」
そこで沙織はバックから祖父の遺言状を見せる。
成瀬:「(やはり持っていたのか・・)」
沙織:「橘弁護士さんとの話しを何度も聞きました。これが必要なんですよね?」
成瀬:「どうして貴方がこれを?」
沙織:「私があの家に引き取られる前の日に、祖父の遺品とか整理していたら偶然見つけてしまって・・。中を見たら・・遺産とか権利を私にって・・。これをあの人達が知ったら余計揉め事が大きくなるんじゃないかと・・。いっそう燃やしてしまおうとも考えたんです。」
成瀬:「そうですか・・中を拝見しても宜しいですか?」
沙織は頷き成瀬は遺言状を手に取り中を見る。
そして一通り目を通すと再び丁寧に畳み封筒に戻した。
そして相談内容を聞き成瀬は沙織の弁護を引き受ける事にした。