その1
□ぶらこん
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続いて兄の方を見ると少し息が切れている。
仕方ない、歩幅が違う上に走っているのだから兄にとっては辛いだろう。
取り敢えず担いで走ることにした、何か罵声がとんでるような気がするけど気にしない。
「…ふう、疲れた」
「……いい加減降ろしてよ」
「駄目だよ、また出てきたらどうするのさ。兄さん逃げ切れる自信でもあるの?」
「…そ、それは……」
「家に着くまでもう少しだから待ってて、ね?」
後ろは振り向くともう誰も居ない。
どうやら、ちゃんと撒けた様だ。
だからと言って油断はできない、また出てくる可能性だってある。
だから家に着くまでは兄を担いでかえることにした。
取り敢えず兄も黙って抱えられていることだし、ああ、可愛らしいな。
早めに帰らないと兄、怒っちゃうだろうな。
こんな姿はあまり見られたくないようだ。弟に抱えられてるなんて恥ずかしいと思ってるようだし。
勿論兄と違って僕は見せ付けたいわけど。
兄が僕のものだと証明できるし。
「ふふ、兄さん頬膨れてるよ、怒ってるの?」
「怒ってないけど…。わざと遅く帰ってるでしょ?さっきよりも歩幅小さいよ」
「あ、気付いちゃった?だって兄さん可愛いからさ」
「なんで、可愛いと遅く帰るのが関係あるの…って僕は可愛くないよ!」
さらに頬を膨らませて、向こうを向いてしまった。
すっかり怒らせちゃったみたいだ。うん、そんな兄も随分可愛らしい。
まあ少し経てば直ぐに落ち着くだろう。
今日は家に帰って兄にどんなことしてやろうかな。
そんなことのんびりと思いながらゆっくりと家路を歩いていった。
おわり。