その1

□ぶらこん
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目の前に兄が居た。
一人ではなかった、周りにはちゃらそうな男達がいる。
ああ、そういうことか、と納得できた。
そういえば昔から兄はよく絡まれていた気がする。
どうしてなのか、は未だに分からないけれど。


「ね、ちょっとだけだからさ」
「………」
「ほら、良い子だからお金貸そうよ?」
「……」
「お母さんからまた貰えばいいでしょ?俺達貰えねえから辛いんだよなあ」
「…」
「なあ、少しでいいからさ、おか」
「何してるの」


遠くから声をかけると周りの男たちがいっせいにこっちを見る。
あ、兄も見てくれた。でも、表情が明るくなるわけではない。
もともと表情が分かりにくいし仕方ないのだが。

今回はきっと男の人たちが兄を小学生とでも間違えてカツアゲしようとしたのだろう。
馬鹿なものだ、兄はもう高校生だというのに。
まあ小学生をカツアゲしようとする人なんて可笑しすぎて笑えそうだ。


「ねえ、聞こえなかったの?何してるの。君達」
「あー?お前には関係ねえだろ?」
「…関係あるから言ってるんだけど?」
「なんなの?お前。あ、何、この子のお兄ちゃんってところですか?」
「ああ、だったらさ。ほら、兄弟一緒に金渡そうぜ」


下種な奴らだ。汚い笑顔を見せて近寄ってくる。
……少しだけ兄が怒ってる、弟扱いされた兄が怒っている。可愛い。
近づいてきたこいつらはどうしようか、取り敢えず殴り飛ばしてしまおうか。


「ほら、金だせよ!」
「……うるさいよ」
「あ?…がっ!?」


頬に一発、常に緊張感は必要だと思うが相手にはそれがわからなかったようだ。
他の男たちも怯んでいる。その間に倒してしまうのも良いが少々面倒くさいし兄を連れて逃げてしまおう。


「兄さん、帰るよ」
「……あ、うん。分かった」


兄の手を引いて走って帰る、少し辛いだろうか。
ちらり、と後ろを見ると男達が追いかけてくる、執着の強い奴らだ。
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