フリーゲーム

□もうひとつの美術館
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SIDE:エル




『は…?』

エルは戸惑っていた

【深海の世】に落ちて、それまではよかった

しかし、ここは何処だろうか?

長い廊下

壁にはよくわからない赤と青の絵

右が青

左が赤だ

『何なンだよ、マジで…』

ため息をつく

迅の姿は見えないし、よくわからない場所に来てしまったのだ

当然の反応と言える

『…とにかく進む、か。 PRGやら何やらも進まねェと何も始まらねェしなァ』

ゲーマーじみた言葉を呟き、とりあえず進もうと気を持ち直す

行動学の見地から 人は迷ったり未知の道を選ぶ時には無意識に左を選択するケースが多いらしい、とは誰の言葉だったか

そんなことを考えながら、エルは右に進んだ

『ぅげ、…何なンだよ』

壁には、「おいで」という青い文字の連鎖

小さく表情を嫌そうに歪め、そのまま廊下を進んで突き当たりまで到達する

と、先ほどの絵と同じ青色をした扉があった

『薔薇…?』

青い扉の前には、花瓶に活けられた黒い薔薇

通常、濃い赤色の薔薇を黒バラと言うのだが、その薔薇は本当に真っ黒だった

『……』

何枚かある黒い花弁の中に、一つだけ真紅の花弁がある

それを無言で見つめ、ぼんやりとしたままエルは薔薇を手にとった

『…あ? なンで、…何でとっちまったンだァ?』

唐突に切れ長の三白眼を見開いたかと思うと、エルは手に持った薔薇を見てそう呟いた

数秒それを見つめ、ため息をつく

『まァいい。一応持って行っとくか』

薔薇を無造作に適当なポケットに入れ、花瓶の置かれた台を横に押しやって青い扉を開けた

 




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