その他

□菩提樹
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「近藤さん、起きろ、会議始まるぞ」
「んー…お妙さあん」
「離れろっ俺はお妙さんじゃねぇって、
近藤さん遅れんぞ!」
「ぶっ!?」


寝ぼけて足に絡みついたゴリラ…もとい近藤を土方は一蹴りして放す

普段なら己の大将にこんな手荒い真似はしないが、何せ今は時間がない


「ちょっとトシ酷くない!?いくらゴリラでももっと優しく起こしてくれてもいいんじやない!?」
「俺はアンタの奥さんじゃねぇんだよ
ほら、さっさと着替えて会議行くぞ」
「んー」


未だ夢現の近藤に土方はテキパキと行動していく

ワイシャツに袖を通してやると漸く少しずつ脳が働いてきた近藤がボタンをしめていく


「ほら、ズボンとベルト」
「ん、ありがとう」
「ベスト」


近藤がベルトを締めるとベストを着せてやる
ほぼ毎日のことで、すっかり手慣れてしまっている


「トシ、皆を待たせるといけないから先に行っててくれ
顔を洗ってくるから!」
「ああ、わかった」


会議などは2人そろって行くのが普通だが、
朝は1人で行くのも珍しくはなく、
隊士達も土方1人で現れたことになんの疑問も抱かずにいた

(むしろ、いつも一緒に来なくても…)

そんなことを思う者も居る


「次、今までは五丁目の公園を抜かしていたが、

最近桂の目撃情報が多く寄せられるため巡回ルートに加える」


淡々と会議が進んでいくなか、
呑気で豪快な声か響く


「いやあー、遅れてすまん!」
「近藤さん、おせぇよ
って、アンタはまた…スカーフくらいちゃんと巻けよ」
「ん?ああ、悪いな」


小言を言いつつも土方は近藤のスカーフを直してやる

ありがとな、と笑っている近藤と、呆れている土方を見て誰もが普段思っていることを沖田はアイマスクを外しつつ呟く


「夫婦みてぇですねィ、お二人は」
「あ?何言ってんだ、総悟」
「だって、土方さんアンタの今朝からの行動を思い出してみなせェ

起こしに行って着替えさせてスカーフ巻いて…って、
家事を抜かせば立派な妻のやることでさァ」
「何ふざけたこと言ってんだ
この人が起きねぇから…」 
「アンタが甘やかしてるんでしょ
今時こんなできた妻は珍しいや」
「確かに、総悟の言う通りだな!
トシみたいな嫁さんなら嬉しいぞ〜」
「わっ、ちょ、近藤さん引っ付くなっ」
「なぁに照れてんでィ、気持ち悪ィ」
「照れてねぇ!」


2人は知らないが、実は隊士の中では「おしどり夫婦」と言われているのだ

端から見ればほぼ一日中一緒に居る2人はイチャイチャしているようにしかみえないし、

実のところ2人もイチャついているのだろう

「はあ…もういい
近藤さん、他に会議で言っておくことあるか?」
「ん?そうだなあ、あ、
最近は日差しが強いから、こまめに水分補給すること!」
「またアンタはテレビに影響されて…」
「でも大事なことだろ?
皆自分の体大切にしろよ」
「はいはい
それじゃ、会議終わるぞ」
「よし、皆今日もよろしく頼む!」


近藤のその言葉で全員バラバラ動き出す


「あ、そういや近藤さん朝飯は?」
「まだ食ってない
お、そうだ!トシはもう食った?」
「いや、まだだけど」
「それじゃあ久しぶりにどっか食いに行こう!
そのまま巡回に行けばいい時間だし」
「あ?何だよ、急に」
「たまにはいいじゃん!こんなオジサンと食べるのは嫌かもしれ…」
「あー、わかった、行こうぜ」


土方がそう言えばパアっと顔を明るくして馴染みの定食屋の名前を挙げていく

そんな近藤の半歩後ろを歩きながらため息を吐いた土方も、口元が緩んでいる

結局のところ、互いが好きなのだ


「あれ、2人そろってどちらへ?
お二人の巡回の時間はまだですが…」


山崎が門に向かっていく2人に声をかける

局長と副長が出かけるのであれば、
万一のために一応聞いておかなくては仕事に色々と影響する


「巡回の前にどっかで朝飯食おうと思ってさ!
そのまま巡回行ってくる」
「そうですか
お気を付けて」
「おう、行ってきます」
「何かあったら連絡よこせ」
「はい」


(あ、副長口元緩んでる

せっかく久々に2人で飯食いに行くんだもんな、
2人には連絡しないよう皆に言っておこう)


「本当に仲いいですね、あの2人」
「暑苦しいぜ、まったく」
「まあ、確かに…

でも、何だかいいですよね」


暑苦しいくらい仲のいい上司達に嫌な気がしないのは、

きっと皆この真選組という大家族が好きなんだ


豪快で暖かくて子供達と仲のいいゴリラなお父さんと

汚れ役も買ってでて皆を支えてくれる優しいお母さん

そして、仲のいいおしどり夫婦


そんな家庭に居れば、隊士(子供達)である自分も、もちろん幸せなのだ


そんな、沢山の愛に溢れている大家族が皆大好きなのだった


-fin-
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