過去作品

□土方十四郎の日記
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 5月28日 晴れ


 「日記?」
 「そうだ
 日記を書くのは脳にいいらしいぞ」


 近藤さんがそう言って日記帳をくれた
 せっかくだから今日から書いてみることに
 した

 最初は自分のことを自己紹介のように書く
 と良いらしい
 何年か後に読んだときに当時の自分を思い
 出せるから

 現在大学2年、成績は一応学年トップ
 近くのコンビニでバイト中
 アパートで一人暮らし
 
 これからこの日記帳を使い切るまで毎日書
 いていこうと思う


…うん、こんなもんでいいだろう

俺は日記帳を閉じた


─────────────────…


「あ、あの」


1人、食堂で飯を食っていると話しかけられたら

顔を上げると、見たことのない白髪頭で魚が死んだような目をした男が


「…なんだ?」
「相席、いいですか」


周りは昼時で混んでいるとは言え、
席は空いている

だが断る理由もない


「…どうぞ」
「え、マジで!?」
「あ?
んだよ、嫌なら…」
「ち、違う違う!嫌じゃない!
し、失礼しますっ!!」


なんだコイツ、変な奴だな
こんな奴うちの学校にいたか?

他校の奴だろうか


「あのぉ、土方くん?」
「あ?んだよって、俺の名前…」
「へ?あ、いや、ほら!土方くん何かと有名だからさ!」
「(何かとってなんだ?)…あっそ」
「それで、そのご飯にかかってるのは…
マヨネーズ?」
「そうだけど?」


今日の俺の昼食はカツ丼土方スペシャル

何でこんなガン見してるんだ?
もしかしてコイツもマヨラー??


「…食うか?」
「へ!?
あ、いや、いいですいいです」


いつもの通りマヨネーズは美味しい

かき込んで居ると、ぼそり、
白髪男が呟く


「なるほど、こういうことか…」
「あ?何が」
「いや、別に…ってなぅ、土方くんっ!」
「うっせぇな!ってかなぅって何だよ!!」
「おまっ、ここにマヨネーズついてんぞ

かわいいことすんなよマジでヤバいからっ!」
「は…はあああああああ!?////」


ヤバい、コイツ変な奴だ
危機感を感じた俺はマヨネーズを拭いつつダッシュで立ち去った



 6月1日 晴れ

 変な奴と会った
 俺のことかわいいとかぬかしやがった
 絶対頭おかしい、もう関わんねぇようにし
 ようと思う

 
──────────────────…


「いらっしゃいませ」


コンビニでアルバイト中、
特に難なくこなしていく

大学に入ってからずっとだから、
もう慣れたもんだ

品物を並べていると、
レジを頼まれる


「はい」


いったん作業を中断してレジへ向かう

紙パックのイチゴ牛乳に弁当
何てアンバランスなんだ


「あ、アンマンひとつ──…」
「はい」
「…じかたくん」
「はい?」
「土方くんっ!」


顔を上げると白髪のあほづらがぽかんと口をあけている


「ちょ、え、すごくね!?
何、そんなに俺に会いたかったの?
もー、言ってくれれば会いに行くのに!!」
「何でそうなる!?
バイトしてんだよバイト!!
誰がてめぇ何かに会いたいかっ!」
「もー、ツンデレだなあ」
「誰が!?」
「あら、土方くんの友達?」
「違います!」
「未来の恋人です」
「嘘つくなぁぁぁ!!」
「あらそう、彼氏なの」
「違いますけど店長!?」


つっこみ疲れていると馬鹿がひとりで何か言いだした


「実はさ、この間の食堂では、
土方くんのこと忘れようと思って話しかけたんだ
友達が、食事を見ればいいって言うから…」
「は?」
「だって、俺もともとノンケだし、
いくら土方くんが美人だからって、一目惚れだし…」
「誰が美人…」
「でも!
土方くんなら男でいいや!

だからもう何も気にすることなく俺の胸に飛び込んでおいで!」
「何でだぁぁぁ!!
お前ホントまじ何なんだよ!?」
「いい子じゃない、土方くん
よかったわね」
「店長ぉ!?
本当違いますから、俺そっちの気ないですから!」
「土方くん好きです、
つき合ってください!ごふっ」




 6月5日 晴れ

 バイト中にまたあの白髪野郎に会った
 俺のことが好きだのなんだの、
 変なことぬかしてたから殴ってやった
 
 関わったら間違いなく面倒くさいことにな
 るだろうから、
 できるだけ関わらないようにしたいけど

 でも何だかこれからの日常がああなる気が
 して、もうすでに怠い



つづく!
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